野の書ギャラリー

書家村上翔雲の作品を少しずつご紹介させてください。日々の雑感もほんの少し

柚子の木

こんにちは

今朝は 雲の合間に 青い空が見えています。

葉が繁り過ぎでは と気になっていた柚子に花が咲いて 盛んに散ると、すぐに 深みどりの実が(小指の爪くらいですが) 現れました。

元気そうです。
f:id:snow36:20180607104053j:image

去年 事情があって 数mほど離れた場所に 移植しました。

その後の手入れが十分ではなかったようで、葉が枯れて 今年の冬は 実がなりませんでした。

来年の冬は 楽しめればと思っています。

 


f:id:snow36:20180607111234j:image

  「朝は澄みきって おだやかな ながれを一すじ」種田山頭火 句 (210×295m/m)

 


f:id:snow36:20180607111524j:image

  「須磨寺や吹かぬ笛聞くこしたやみ」松尾芭蕉 句  笈の小文 (325×245m/m)

                                       村上翔雲 書

 

 

メドーセージの6月

こんにちは

メドーセージは、茎が長く伸び過ぎると 花は地に着きそうなほど お辞儀します。

支柱を立てます。見た目が残念です。

 GWあたりから 若葉を持つ茎が するすると伸びてきました。

 

去年の夏の終わりに、都会に住む友人と会って食事をした後、きれいな通りをぶらぶら歩いていると、

とあるお宅の庭に こんもりとした姿に剪定されて、美しい青い花を咲かせているあか抜けた「彼女」を見かけました。

                             

                               ❗

こんな風にしてあげなくてはいけなかったのか。

来年はしくじるまい。

その時は、我ながらどうしたのかと思うほどに なかなかの気合いの入りようでしたが、

気付いたら、まあ この子は農協さんで「サルビア」と書かれていた 素朴な愛すべき娘なんだし…と

切ったり切らなかったりを繰り返している程度になってしまいました。

つい先日 お隣の中庭に偉そうなことを書いておきながら……   本当に……

 

切ると、新鮮で力強い緑の香りがします。


f:id:snow36:20180605093343j:image

花芽が 出てきました。気持ちとしては、もう切れなくなってきました。
f:id:snow36:20180605093528j:image

毎年元気な顔を見せてくれる 手の掛からない かわいい子です。

 


f:id:snow36:20180605001419j:image

  「人声が近付いてくる 木の芽あかるく」

     種田山頭火句(240×320m/m)

 


f:id:snow36:20180605000439j:image

  「海くれて鴨の声ほのかに白し」

    松尾芭蕉 句    野ざらし紀行             (325×245m/m)                   村上翔雲 書

 

 

 

 

箱庭ユキノシタ

こんにちは

ユキノシタが咲いているから、見に来ていいよ。」と言われて、お隣の中庭におじゃましました。

名前の言われは いくつかあるそうですね。

 ユキノシタは「小柄で おとなしいのだけれど、出会うと話をしてみたくなる人」といった感じがします。

 小さな白い花が 下に向かって一斉に咲いている様は、

雪の降り続ける日を思い浮かべます。
(ちょっと 遠いでしょうか)


f:id:snow36:20180603170836j:image

あるがままに しつらえられた箱庭山奥は、もう少し手を入れたら 見やすくなるかも と勝手に思ったりしますが、

これはこれで 世界があるのだとも感じます。

眺めていると、気持ちが和んできます。

石を伝う井戸水の音が 心地よく聞こえてきます。


f:id:snow36:20180603165420j:image

  「水音といっしょに里へ下りて来た」

     種田山頭火 句(320×245m/m)

 


f:id:snow36:20180603165801j:image

  「ひさしぶりに掃く 垣根の花が咲いている」

種田山頭火 句(240×320m/m) 村上翔雲 書

麦畑 風が吹いて

こんにちは

昨日の 冷たい雨から、今日は いいお天気でしたね。

 

近くの麦畑は、すっかり黄金色です。

穂は、硬くすっくと伸びています。

なだらかな山と麦畑は、爽やかな5月の空に別れを告げ 刈り入れを待っています。

同じ場所ながら 秋とはまた違う趣です。

 

歩いて行くと、高い空中や 鋤かれた畝の雑草の中で ひばりが忙しなく歌っています。

 

見上げると、黒いシルエットの小さなひばり が小さな羽を必死に羽ばたいて 上昇しながら、

休む事なく 力強く声を張って
囀ずっています。

しばらくすると、囀ずりながら 急降下して 地面に突撃する勢いで 着地。

麦畑ではなく、まだ鋤かれていない草が生えている畑などに 巣があるようです。


f:id:snow36:20180525072052j:image

麦刈りを終える頃、川沿いや溝辺りで、蛍が見られるようになります。

まむしが出て来る時もあるそうですが、幻想的な風物詩ですね。


f:id:snow36:20180601164315j:image

松尾芭蕉 句「山路来て 何やらゆかしすみれ草」(325×245m/m) 野ざらし紀行

 


f:id:snow36:20180601164705j:image

松尾芭蕉 句 「花盛り 山は日ごろの朝ぼらけ」(325×246m/m)    村上翔雲 書

琴引き浜 とっておきの休日は


f:id:snow36:20180528162340j:image

  「松かぜ松かげ寝ころんで」

                         (240×320m/m)

 

週末に 丹後半島の琴引き浜に行って来ました。

(この度は、勝手に番外編です。ちょっと長くなりますが、どうぞお付き合いください。)

 

時々お世話になる宿の部屋の窓からは、岩礁の向こうに 水平線が視界いっぱいに広がります。

持参の長靴を履いて そろそろと宿のそばの岩場を降りて行くと、釣りを楽しむ人の姿もあります。

足元にいくつもある 小さな潮溜まりに 小魚や  いそぎんちゃく、やどかりといったかわいらしい生き物を見つけると、時間を忘れて見いってしまいます。
f:id:snow36:20180528163600j:image

 

宿の夕食は、前もってお願いしておくと、かますやひらめなど 旬の魚を色々見繕って 舟盛りにしてくれました。

銀むつの蒸し焼きや のどぐろの塩焼きなど、ひとつひとつが丁寧に料理されていて、贅沢だなぁと しみじみ味わいました。

 

食事を楽しんでいると、宿の方に「そろそろ夕日がきれいに見える頃ですよ。」と、

日射しを遮っていたカーテンを開けて勧められました。

 

水平線に 橙色の太陽が沈んで行きます。

明るい色に重なって、夜の始まりの淡い暗がりが降りてきます。

夜の青が深まるに連れて、いか釣り船の白い光が 点々と冴えて来ました。


f:id:snow36:20180528164844j:image

こちらの宿には 露天風呂もあり、眺めも素晴らしいものでした。

 

近くの観光地は、車で東に10分ほどのところに「立岩」があります。

周囲1kmほどの一枚岩で、離れたところからでさえ、かなりの威容でした。


f:id:snow36:20180529064412j:image

 

ここから西に25分ほど走ると、鳴き砂の「琴引き浜」があります。

琴引き浜は、きれいに保たれていて 浜昼顔が咲いていました。

 

とても静かな海でした。

 

かわいい音をたてる鳴き砂を ゆっくり楽しんで過ごしました。


f:id:snow36:20180528165924j:image

 


f:id:snow36:20180528170333j:image

「山しづかなれば笠をぬぐ」

                     (320×245m/m) 村上翔雲 書

 

岩藤さん


f:id:snow36:20180522211248j:image
  「名もない草のいち早く咲いてむらさき」(240×320m/m)

         

こんにちは

三年ほど前に、あるお豆腐屋さんから 小さな盆栽を三つ頂きました。

手のひらに乗る大きさの可愛らしさです。

それぞれ違った植物が こんもりとした苔に植え込まれていました。

名前も知らないまま、水をやっていました。(それ以外の手入れをしていないということですね。)

そのひとつが、今時分に 青みがかったつつじのような色の花を咲かせます。 

日が暮れると 葉をおじぎ草みたいに畳んで休みます。

すべてが 小さくて可憐で 風に揺れています。

花の姿が 藤の花の房に似ているので、和を感じ 見ていると穏やかな気分になります。


f:id:snow36:20180523074839j:image

「庭藤」。「岩藤」とも。

 


f:id:snow36:20180523080707j:image

  「水のうまさを蛙鳴く」

               (240×320m/m)     村上翔雲 書



 

 

仕事部屋にあるもの

こんにちは

父の仕事部屋に 資料を探しに行ったときに

以前から 気になっていた「ゴッホ」(講談社1995年)の画集と

小川国夫さんの「ゴッホ」(平凡社1975年)を持ち帰って見せてもらうことにしました。

 

f:id:snow36:20180520005217j:image

 

小川国夫さんの本は 装丁も美しく、箱は画家最後の土地 オーヴェール時代の「荒れもようの空に烏の群れ飛ぶ麦畑」で覆われています。

 

小川さんの世界に引き込まれていくように、一気に読みました。

 

ゴッホの作品、移り住んだ土地のことや、弟テオに送った書簡など、人生が丁寧に描かれてあり、

小川さんの取材の旅をなぞっていくうちに、ゴッホの心の動きを 垣間見るような気持ちになりました。

 

小川さんの本を読んでから 画集を開くと、それぞれの絵の素晴らしさが より分かり易く楽しめました。

画集の表紙の右下に 小さく「タンギー爺さん」の肖像画があるのも ちょっと楽しい。

 

タンギー爺さんは 画家達を庇護する画商で有名な人ですが、

 

原田マハさんの「ジヴェルニーの食卓」の中で描かれているお話が 生き生きとして とても素敵だと思います。

少し寄り道してしまいました。

 

父の仕事部屋は、制作のための筆や硯などの他に 様々な本があります。

私には 取り立ててこれという才能もなかったのに、小さい頃から 美術館に よく連れて行ってもらいました。

 

感謝しています。


f:id:snow36:20180520004055j:image

  「所詮は自分を知ることである。私は 私の愚を守らう。昭和十五年二月 御幸山一草庵にて 山頭火 語」  (320×245m/m)  村上翔雲 書