野の書ギャラリー

書家村上翔雲の作品を少しずつご紹介させてください。日々の雑感もほんの少し

秋に憩む

こんにちは。今日は寒い雨でした。

晴れた昨日に 家の近所を久しぶりに歩いてみました。

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高い空に雲が流れます。

最近は、普段より用事が立て込んで しばらく歩いていませんでした。

 

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イヌタデの咲く原を過ぎると、小さな水路の奥の方までミゾソバが咲いていました。後ろで枯れたように何本も立っているのは、穂が綿となって散り終えた蒲です。

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イヌタデミゾソバも、可憐な花は花びらではなくて萼なのですね。そんな花が多いことを知るようになりました。

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使われなくなったコンクリートの焼却炉から、イヌタデがこぼれるように咲いていました。咲きだしてから かなり経ちます。

引いてから焼こうと捨てられたものが根づいたようです。それでも長く咲き続ける野の花の気丈を感じて ここを通る度に眺めてしまいます。

 

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青みのある赤い花は、ノアサガオの仲間でしょうか。朝夕と寒くなってきていますが、しぼんでは新しい花が咲いています。

 

f:id:snow36:20201105194949j:image庭に戻ると、アカタテハが飛んで来ました。放ったらかしになっていたオレガノ・ケント・ビューティを切ろうとしていたら、怖がらずにそばを飛び続けて私の肩にまで しばらく止まってくれました。

ちょっと(いえ、かなり) お見苦しい環境で 日向ぼっこの蝶々にはお気の毒ですが…。秋らしい色合いの翅ですね。

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🍂🍁

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連れ合いが 新潟へ用事で出かけました。写真の丸いタンクの上辺りに 八海山が写っているのだそうです。左に中ノ岳、駒ヶ岳が並んでいるのですね。

 

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伺った先でいただいたものもあります。自分で買ったお土産のお米は義弟に、小さな大吟醸は息子にと渡していました。

f:id:snow36:20201107222221j:image息子の八海山を少しお相伴させてもらいました。すっきりと飲みやすくて常温でも美味しいお酒ですね。

 

これからの季節の水炊きには欠かせませんので、私は かんずりが一番嬉しく思いました。

写真には半分しか写っていませんが、右端の かんずり酒盗には嵌ってしまいました。カツオの内臓に合わせたかんずりが 唐辛子と麹と柚子でできたものだからか辛みも柔らかで旨みが豊かです。

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笹団子は、清涼な香りがする笹で包んで藁で結えてあります。端を持って引くと するっと解けます。結び方を面白く思いました。ヨモギのお団子はもっちりと柔らかくてこし餡は素朴なお味がします。あっさりとしていて 美味しくいただきました。

 

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娘から どんぐりの写真が送られてきました。

コロナのために あまりお出かけができないので、1歳児のクラスも秋を楽しめるようにと 拾ってきて煮沸したものを園庭に置きます。みんなでささやかなどんぐり拾いです。

すぐに口に入れてしまう年齢なので、目が届きやすくするために、9人をいくつかに分けてやってみたそうです。

みんな 顔を輝かせて、何やらお喋りしながらにこにこと小さな手で拾っていたとのことでした。

そろそろイヤイヤ期に入るお子さんもいたり、お迎えを待ちかねて夕方に機嫌の悪くなるお子さんもいるようですが、

どの子も とてもかわいいと言います。

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先日、就活中の大学生が生まれたばかりの赤ちゃんを公園に埋めてしまった事件を聞きました。電話をかけてきた娘とそのことについて少し話しました。

どんな事情があったのかはわかりませんが、お腹に命が育つ感覚を長く持ちながら、相談できる人がいなかったのなら 辛い日々だったでしょう。相談する必要すら感じなかったとまでは思いたくありませんが、そうだとすると あまりにひどいことです。

たとえどうすればよいのか分からなくなっても、居ないことにできるものではない現実です。

生まれてきたばかりの命をなぜ手にかけてしまったのか。

その先を考えてみることはできなかったのか。

心が痛みます。

娘とふたりで亡くなってしまった赤ちゃんのことを思いました。

 

保育士さんは皆さんそうなのでしょう。就職して2年目の娘も 担任している子どもたちの服を畳む時に 匂いで誰のかがわかると申します。着替えた服に名前が書いていなくても 柔軟剤の香りに紛れていてもわかるのだそうです。親御さんなら尚のことでしょう。

どんな理由があったとしても、お母さんとして赤ちゃんを可愛がってほしかったと言っていました。時に面倒でも疲れてしまっても 子どもが一歩一歩と成長していく喜びが きっとわかるのに。

 

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暗いお話になりまして。次回は、西国三十三所のひとつのお寺へ伺ったことを書いてみようと思います。山の上のお寺では紅葉が始まっていました。

今日もご覧くださいましてありがとうございます。

 

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「葉鶏頭 池に沈みし百の蟹 兜子の句」(210×300m/m)  玄玄・時雨月・一休寺 赤尾兜子

 

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「自分の中に神が宿っていることを意識して 神とともに神の中に生きることだ そして 言葉で神を定義しようなどと試みないことである トルストイの言葉」トルストイ  村上翔雲 書

秋の日。少し遠出をしてみる (2)

こんにちは。

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最近の朝は深い霧で、7時過ぎになると漸く辺りに薄明かりが射してきます。

 

農道脇や 我が家の近く薬師堂の丘の下の石垣では、2週間前には彼岸花が並んで咲いていました。今はヨメナが咲き始めています。素朴で愛らしい姿は 色の寂しい秋の野の景色に優しさを添えます。

f:id:snow36:20201027143244j:image水路の花。

 

f:id:snow36:20201027144955j:image石垣の花です。

 

 

🌿

これまで 2、3度書いたことのある場所に出かけました。よろしければどうぞお付き合いくださいね。

 

京都市内から、京丹後市へ向かう途中 由良川の辺りは 本降りとなり山あいの集落は、雨のなか白く靄んで霧のような雨粒が車の窓に降りかかります。

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やがて日本海側に出るまで 厚い雲に覆われたり薄日が射したりを繰り返す空の下を走り続けます。

 

🌿🌿

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丹後半島にある海辺の宿に着くと 道路沿いの藪に薄紫のツリガネニンジンの花が咲いていました。

f:id:snow36:20201027143416j:imageたしかに 冴え冴えと冷えた秋の音色が チリンと聞こえてくるような気持ちがします。(梨木香歩さんの「家守綺譚」が好きなのです)

 

 

こちらは家庭的な雰囲気のお宿で 板前さんのご主人が作られる美味しい海のお料理がいただけます。

お宿が掘削された温泉は、かけ流しのアルカリ性単純温泉で、柔らかなお湯です。

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ホームページの写真をお借りしました。お天気が良ければ 眼前に水平線が長く延びる海のさざなみの音を聞きながら お湯が溢れる露天風呂で寛ぐことができます。海に浸かっているようで不思議な気持ちになります。

 

この日の天候は回復することなく 美しい夕陽は昏い雲に沈み込んでいました。雨は止んでいましたが、波が高く 眼下の岩礁にも打ち寄せています。冬が近くまで来ていると感じます。

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f:id:snow36:20201027150158j:image潮が引いてお天気がよければ そばまで行っていろんな生き物が見られる潮溜まりです。

 

 

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カンパチと真鯛などの舟盛りや ジェノベーゼソースのかけられた白身の魚(教えていただいたのに忘れてしまいました)のサラダ、天ぷらやノドグロの塩焼きと いつもの変化に富んだ楽しいお料理が続きました。

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海を眺めていると 沖にあった定置網が見当たらなくなっていて、仲居さんに聞いてみると以前から港の風が強くて操業し難かったそうで辞めてしまわれたとのことでした。代が変わられたのかもしれません。

 

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🍁

翌朝は 帰りに立岩に回って帰ることにしました。

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間人(たいざ)ガニで有名なところです。

 

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立岩は、京都府のホームページによると 20mの高さがある柱状玄武岩とのことで、鬼退治伝説があるそうです。柱状節理と言えば、ここからそれほど遠くない鳴き砂の海岸に迫り出している壁のような岩も横縞の模様でした。

 

私たちだけで誰もいませんでした。

そこに アカツメガニが ふいと現れました。みんな十分なおとななのに 子どものように大騒ぎです。

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可哀想にびっくりしてカニ走りで動き回るカニを写真に収めようとしますが、どうしてもブレてしまいます。

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駐車場は危ないからと カニには早々に茂みの中へ行ってもらいました。

あまり観光はできませんでしたが、久しぶりに子どもたちと旅行ができたことが嬉しく思いました。取り立てて何か特別なこともないささやかな我が家ですが、普段のことなどいろんな話をして楽しく過ごしました。みんな元気なら それで十分ですね。

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GoToトラベルの割引以外にも 地域共通クーポンをいただいたので、お土産と地元のお酒を買って帰りました。

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🍂🍁

京丹後市から帰って来ると、友人が黒枝豆を届けてくれていました。直売のお店に並んでいるようにたくさん置いてありました。お礼の電話をしてから 急いで豆を取り 水を何度も取り替えてもみ洗いをしました。焼き枝豆にする分を少し残して、大鍋2つで2回に分けて茹でました。

こちらは今日また改めていただいた黒枝豆です。

f:id:snow36:20201027143631j:image田舎田舎してまして、お恥ずかしいですが…。やはり時を移さず下処理をして湯掻いてジッパーつきのポリ袋に入れて冷凍します。

 

有名な丹波の黒豆が育つのは、霧の多い気候のおかげと数日前の新聞で知りました。若い枝豆のさやは霧で潤い 昼間の乾燥した日差しで実を育むそうです。

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丹波篠山市ではないのですが、こちらも山あいの盆地で 冷え込んだ秋から冬にかけての朝 濃い霧に包まれていれば、その日は爽やかな晴れが約束されます。ふっくらと大きく甘みが特徴の黒枝豆はこの季節からの贈り物です。

 

💐

秋明菊が輝くように咲いています。こちらは ご近所の歯医者さんの畑の隅です。朝 霧の抜けた新しい光を受けて一心に無垢な白い顔を向けていました。

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我が家の花は やっと蕾が膨らんできたところです。

小さいながら秋明菊に似た花を咲かせるアネモネ・シルベストリスも 春に続いてもう一度咲いています。

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この花々を見ると 思い出して心が温かくなるひとがいます。一輪の花にも思い出は重なり、忘れ難い記憶になっていくのですね。

 

ご覧くださいまして ありがとうございます。

どうぞ楽しい日々をお過ごしくださいますように。

 

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「荒たへの藤江の浦にすずき釣る海人とか見らむ旅行くわれを」(69×69.5cm) 柿本人麻呂 詩

 


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「みほとけといちりんの菊いや澄むも 三樹彦の句」(45.5×69.5cm) 伊丹三樹彦 句   村上翔雲 書

  明石市立文化博物館 所蔵 2点とも(作品 8・24)

秋の日。少し遠出をしてみる (1)

こんにちは。

また日が空いてしまいました。お元気でいらっしゃいましたか。

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夜は、マツムシと鈴虫の音がよく聞こえてきます。ほかにもいくつかの虫の声が静かに重なり合って、昼間とは違う湿った空気に包まれます。寒くなりましたが 最近では曇り空にひとつ輝く火星を見ながらひと時を過ごして一日を終わります。

 

少し立て込んだ日が続いたので、気晴らしをと思い京都へ出かけました。

もうおとなになった子どもたちに声をかけましたら、意外にも一緒に行くと申します。車で1時間程ほどの所に住む息子は 拾って参ります。

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この度は 私のわがままで、京都伊勢丹

美術館「えき」京都 へまず行くことにしてもらいました。

車であれば、駐車場から美術館のある7階のフロアに直接行くことができます。

娘とこちらで落ち合いました。

 

伊勢丹の美術館「えき」では、10月25日まで

「キスリング展 エコール・ド・パリの巨匠」を開催されています。最近関西でも増えている予約は こちらでは必要ありませんでした。

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華やかなチェックの衣装は、作品 ベル=カズー(コレット・ド・ジュヴネル)の衣装を 北海道ドレスメーカー学院の学生さんたちが再現されたものだそうです。

 

ポーランド クラクフ出身のキスリングは、100年ほど前にフランス パリで興ったフランス人以外の画家などによる芸術活動 エコール・ド・パリを代表する画家の一人です。

19歳でパリへ行き、多くの画家との出会いを得て 才能を華やかに開花したそうです。

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先週の土曜日、入館前に丁寧なチェックを受けた朝10時には、お客はほとんどいなくて ゆっくりと鑑賞できました。と気取っていますが、キスリングが観られる!と かなり浮かれてしまっています╰(*´︶`*)╯♡

30分もすると少し混んできましたが、50点ほどのまとまった作品をこれだけ落ち着いて観る機会は なかなかないと思いました。

 

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始めに キュビスム(キュビズム) に影響された初期の 静物画。

ご存知の方には 今更で恐縮な説明ですが、ある対象物をいろんな角度から見て捉え 一つのキャンバスに描かれた静物画は、たとえば 歪んで角張った形のテーブルに置かれたりんごとなり、観る私たちの心に訴える作品となるのですね。 

パンフレットの小さな写真になりますが、左下の絵です。歪んで見える机が迫ってくるようでした。

見えにくいですが、椅子の背にサインが書かれているのも洒落ていますね。

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この静物画は フランスの外国人部隊に志願して負傷した24歳の頃の作品でしょうか。

 

 

***

女性の肖像画は、優美な物腰で 頭を右に傾け  大きな目は 湖面の深みを覗くようで、放心にも、思いを表情に出すまいとしている強さにも、どうして…と問いかける面差しにさえも感じます。

こちらの若い(19歳とも)女性も そんな表情に見受けました。

f:id:snow36:20201017120826j:image (思い切って買ってしまった図録の表紙です。最近の図録は、おもて表紙や 裏表紙と区別のないものが多くて とてもきれいですね)

二つの戦争に翻弄された時代ゆえの よるべないキスリングの人生の心象が描かれているのだとしても、肖像画に描かれた顔は強く印象に残ります。 

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この度の展覧会から離れるようで申し訳ありませんが、昨年の夏に兵庫県美術館で「印象派からその先へ・吉野石膏コレクション」を観に行った折に キスリングの作品がひとつ展示されていました。

「背中を向けた裸婦」という作品は 全体が赭黄や黄茶いろといった みかんを思わせるような温かな色合いで、頭を模様の入った薄青い布で包んだ女性が流れるような美しい背中を見せて腰掛けていました。左に向けられた眼差しは ひんやりと穏やかに感じられました。(その時のブログでは シャガールの最晩年の作品の「パレード」に特に熱が入ってしまい、キスリングのことには全く触れていませんでした…)

 

***

花を描いた作品は、花びらひとつひとつが絵具を盛り上げて丹念に描き込まれ、色鮮やかで たいへん華やかです。よく画題にされたというミモザは、こぼれ落ちるように満開の小さな花がつぶつぶと膨らむその質感に見入りました。

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図録のもう一つの表紙から。

 

人物や静物の作品の背景の色は縦に分かれているものが多くて、影のように主題を直線で淡く囲んでいる作品もあり特徴的に思いました。

エコール・ド・パリの仲間、藤田嗣治との交流も深くあったとのことで、コラージュ仕立ての素敵な写真パネルが飾られてありました。

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長々と書いてしまいまして。実はこの後 京丹後市へ行ったのです。後日(せめて1週間あとぐらいには…) 続きを書かせてくださいね。

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🍂🍁

連れ合いの古い友人が 丹波篠山の黒枝豆を送ってくれました。お礼の電話ついでに 久しぶりにお出会いする約束をしていました。

大急ぎで枝から豆を外して、よくもみ洗いしてから茹でました。もっちりとして甘みが広がります。少し焼き枝豆にもしました。

 

焼いたものは、食感も良く野趣も感じて男前な味わいです。なんともシンプルで美味しい。

洗って塩をもみ込んで しばらく馴染ませた豆を フライパンで素焼きか ホイルを敷いた魚焼きグリルで焼きます。片面焼きのグリルなら途中で豆を簡単に返すといいようです。

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今日も最後までお付き合いくださいましてありがとうございます。

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「猿を聞くひと 捨て子に秋の風いかに 芭蕉の句」 (340×240m/m) 「野ざらし紀行松尾芭蕉

 


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「まなこ澄む 男ひとりや いわし雲 兜子の句」(210×300m/m)  赤尾兜子  句   村上翔雲  書

 

黒い岩。奔る滝

こんにちは。

お久しぶりです。お元気でいらっしゃいますか。

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秋分の日の空です。爽やかなよいお天気でした。

 

最近小雨が降り続いたからか、夏の名残りが薄葉紙を折り畳むように片付けられて 新しい秋が静かに始まったと感じます。

今夜は、肥えてきた月が 雨に濡れた屋根を白く浮かび上がらせています。

 

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鉢に植えた 姫フウロソウは、くすんだ色の小さな花を夏の間咲かせ続けていました。花が終わると 人差し指を曲げるようにして頭を下げます。

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最近 やっと元気を取り戻して花色も再びはっきりとしてきました。かわいい花です。

フウロソウとは別に ヒメフウロという種類の花もあるのですね。ゲンノショウコの仲間は、どれも可憐で種類が多いですね。

 

夏の前から来年の準備を始めている石楠花。

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今年は 気の毒なほど か弱い花が僅かに咲いただけでした。来年の春には、香り豊かな優しい花々を見せてくれればと思います。

 

こちらは、少し前までつくつくと青い芽を出していたポリキセナ。気づくと 分球したものか、土の上に ころぶように丸い球根から 小さな芽を立てています。

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連休のなか日に 人の少なそうなところだったと連れ合いが申しますので、滝を見に行きました。

兵庫県香住町村岡は 猿尾滝。2時間ほどのドライブです。

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細い県道から見える滝は、ブナやモミジなどの木々に囲まれた川の向こうにすぐに見てとることができます。

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形から名付けられた細長い滝は、雄滝と雌滝の2段になって 高さ60mの高さから 流れ落ちています。

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近づいて行くと、下の雌滝がまず目に入ってきます。

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山の形に従った階段を登って行くと 雄滝のそばに出ます。

滝が 緑の自然林を冷えた空気で包み込んでいます。

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滝の流れる岩は、猿尾滝ヒン岩体というそうです。火成岩でしょうか。上の滝の直線だけで出来上がった黒々とした岩肌は力強く見えます。

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近くへ歩いて行くと、細かい水しぶきが舞います。ひんやり肌寒く感じます。

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雄滝を受ける滝壺から 下に細く落ちるのが雌滝とのことでした。

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(ごめんなさい。5つ上と同じ写真を貼っていますね)

 

雌滝の滝壺から続く つるりとした岩盤を水が走ります。夏は子どもたちが滑って遊んでいたそうです。水は、案外と井戸水くらいの温度だと連れ合いが言っていました。

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川に沿った木々の根元に、かわいらしい色が見えます。青いツユクサは 気温が低いと 夕方4時頃でもきれいに咲いていました。

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ツユクサの近くの 距が巻いた赤紫の花は、ツリフネソウでしょうか。3輪ほどが 辺りを明るくしていました。

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入場料は 100円。ポストのような木箱に入れます。この素朴な料金箱は、早春の頃に出かけた節分草の群生地を思い出します。

 

🍇

滝を見て帰って来ると、いつもこの時期には「藤稔のおっちゃん」と勝手に呼んでいる人が (連れ合いと幼なじみなのに 失礼な呼び方ですね) 、「出来がよくないけど…」と藤稔を持って来てくださいました。

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藤稔は、今年も粒が大きくて 豊かな果汁が美味しいブドウでした。生産者の売り場へ商品として出されるのに、私たちにもお裾分けをしてくださいます。

 

 

🍁

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数日前の青い空と、終わりの百日紅の花。

若い頃に 場当たり的な長い旅を何度か一緒にした古い友人は、どんな風に過ごしているだろう。ふと思います。

2年ほど前に、ブログで少しだけ この頃の旅について触れたことがあります。私たちは、朝 ある程度下調べをしたら さっと出かけるのでした。楽しく過ごすために 安全を第一に考えて行動します。

着いたところで まずその日のお宿を探します。

日本ではなかったですし、小さなハプニングの連続でした。でも、素敵な出会いや絶景を楽しむ時間、自分で選び取る自由が楽しかった。

もし娘が同じ事をしたら、心配で心配で叱ってしまうでしょう。勝手なものです。

 

私と同じ名前のその友人からの最後の手紙には、寒い国の住所が書かれていました。美術関係の仕事をしているとのことでした。

すっかりあちらの人になったのか、手書きの住所の番地が読み取れませんでした。ラインもまだなくて、携帯電話に小さなアンテナがついていた頃のことでした。

 

 

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昨日の夕暮れ刻も キリギリスとコオロギが鳴いていました。時折 小さな雨粒が当たります。

今日は寒く感じて 長袖を選んでいました。どうぞお元気にお過ごしくださいね。また、お目にかかります。

いつもご覧くださいましてありがとうございます。

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「非思量」(68×34.5cm) 仏語 


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「雨の日は雨を聴く  山頭火 句」(69×69.5cm)

   種田山頭火  句     村上翔雲 書

 明石市立文化博物館 所蔵 (作品 40・51)

 

 

川辺の小さな美術館から

こんにちは。

大きな台風が過ぎまして、昔は影響を受けにくかった当地もほっとしております。

被害に遭われたところの方々が一日も早く日常を取り戻されますようにお祈りいたします。

 

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メドーセージは、花を散らしては咲いてを繰り返し、長く楽しませてくれます。葉の香りも爽やかに 元気で生き生きとした植物です。

 

🌿

先週 久しぶりに外食に出かけました。時々お世話になるお店に電話をしました。

他にお客はふた組だけの静かな夜です。お店には、80年代の洋楽が流れています。ニューヨーク・シティ・セレナーデ。映画は ライザ・ミネリが好きでした。

 

お品書きから 穴子のお刺身とオコゼの薄造りをお願いしました。

穴子は、しっかりとした食感で 噛むほどに身の旨味がじんわりと広がってきます。品のよい甘みを壊さないように、わさびと醤油はほんの少しでいただきました。繊細なお味を大切に味わいたく思いました。

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左上は穴子の肝で 右下のは胃袋だそうです。

肝は色が強いですが、あっさりとしています。お酒のいいおともですね。

 

厳ついオコゼ、こちらは淡白な身に合わせてポン酢です。自家製のポン酢も少しつけるだけに。

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オコゼも胃袋、肝、皮などを手早く造っていただきました。板前さんからどの部分かを教えてもらうのですが忘れてしまいます。もう一度教えていただいて、書き留めました。

右からふたつ目の皮と身の間のきわの部分の梅肉和えが柔らかくて美味しいです。皮と身の間に実(ジツ)がある…。果物でもそうですね。おもしろく思います。

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飲み物の写真を撮るのを忘れていました。

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以前の写真です。

美味しいお魚をいただきたい時に伺う 私たちには、ちょっと贅沢な気分にさせていただけるお店です。

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大きなかまどがあって、蒸し料理も美味しいです☺️

 

 

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最後に美術館へ行ったのは 去年の12月の終わりでした。4月頃のブログには、県立美術館のゴッホ展に前売り券を買っていながら行けないというコロナへの恨み節が混ざったことを書いてしまいました。

高齢の義母もいますので、神戸や大阪へ出かけて行くのも躊躇われます。神戸に住む妹が 郊外からは来ない方が良いと申します。

車で小1時間と近い(車で1時間なら近いうちなのです…) 丹波市立植野記念美術館はどうだろうかと ひと思案して、

この度は、「山本二三展」へ行って参りました。

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エントランスホールは吹き抜けで、作品の垂れ幕が下がっていました。こちらは撮影してもよいそうで、向かって左が「もののけ姫」で 右は「くじらぐも」の背景画です。

 

山本二三(にぞう)さんは、錚々たるアニメーション作品を制作されておられる有名な美術監督と この展覧会で知りました。

背景画で アニメーションの印象が決まるのは想像できますが、特に関心を持ったことはありませんでした。

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会場にずらりと並ぶ背景画は、意外でしたが A4より少し大きなサイズで それぞれ小さな額に入っていました。

絵の端に美術監督の細かな指示が鉛筆で簡潔に書かれているものもあります。

展示されていた作品は、天空の城ラピュタ未来少年コナン、Coo 遠い海から来たクー、タイコンデロンガのいる海、ミヨリの森RPGの背景、小学校6年生の社会の教科書の細密な挿絵や 陸前高田市の 希望の木。 ほんの一部です。

 

じゃりん子チエのお店には、露地の隅のごみや下町のお店の賑わいを感じる乱雑さは描かれていませんでした。それでも大道具の部分と言いますか、がわは隅々まで描き込まれていて 曖昧な箇所はありません。

背景画は、古びた趣の室内も人の気配がないだけで時間が止まったような静寂を感じます。  

ここに計算し尽くしたいろんなものや人物を乗せて 物語の命を吹き込んでいくのですね。アニメーション制作の世界は初めて知る事ばかりでした。

 

一番印象に残ったのは、「火垂るの墓」の作品群でした。作品も30枚と 一番多く展示されていました。

「節子と人形」というタイトルのイメージボード(16.6×25.0cm)は、夕焼けのようにくすんだ薄い赤茶色の絵でした。草もない荒れた道なのでしょうか、清太が妹の節子を抱っこして歩いています。節子はおかっぱが自然に伸びっぱなしになったような髪で眠っているようでした。

メモを取ってはいけないと思って うろ覚えで帰って来てしまい申し訳ありませんが、

「8月に入って、頭がグラグラ揺れるだけで もうお気に入りの人形を抱く力もない。」という内容の文章が ボードの左下に小さく鉛筆で書かれていました。

 

「捨てられた思い出」というイメージボードは、草叢の上に サクマ式ドロップスの缶から 節子の遺骨がこぼれ出ていくつもの蛍の淡い丸い光が取り巻いている絵が描かれていました。

私は 子どもの頃に西宮市に住んでいたことがあり、夙川(しゅくがわ)、満池谷(まんちだに)と、舞台となった地名を懐かしく思います。小さい頃には「まんちだに」は、どこか不思議な音に聞こえました。

満池谷の貯水池のほとりを描いた美しい水彩の背景画がありました。

こんもりと緑深い丘の生茂る草の中に、黒く茶色くふちを取って四角に刳られた暗い穴がふたつ見えました。「火垂るの家」(25.9×36.2cm) 。そこが兄妹がたどり着いた「清太と節子の家」とのことでした。

 

当時の14歳の少年、自らも亡くなった清太は誰にも助けを求めないで 妹を餓死させた無責任な兄なのでしょうか。

状況が違いますので比べられないことかもしれませんが、11年前に14歳だった息子や息子の友人たちは、どちらかと言えば単純で素直でした。部活や友人同志で他愛なく遊ぶことが好きで、学校生活を楽しんで過ごしていたように思います。

私どもの子どもは、いなかの子どもで おとなばかりの環境で甘やかして育ててしまいましたので何とも言えませんが、もっとしっかり育てていれば 4歳の妹がいたとして あの状況で 一人きりで守ることができたのかどうか。…それでも酷なことと思います。

火垂るの墓」の次には、「はとよ ひろしまの空を」という作品の、精緻な「原爆ドーム」の背景画と、「原爆の後」の背景画が続きました。瓦礫の地面にひどく傷ついた人々が累々と倒れていました。透明のセルを小さな形に切って描かれた人々は 瓦礫の背景画に貼られていましたが、極く単純化されていても悲惨な状態でした。

 

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最後のフロアに 5分ほどのビデオが流れていて、拝見しました。

山本二三さんは、中学卒業後、集団就職長崎県五島列島を離れ、岐阜県の夜間高校へ進み 建築を学ばれたそうです。昼間は石材会社で働いて夜間高校から専門学校へ。そこで水彩画を学ばれたとのことでした。水彩画を描く時には、紙に穴が空くほど描けと指導されたことが後に役だっているとおっしゃっておられました。ゆっくりとお話される穏やかなお顔。

 

屋久島へ出かけられて取材された「もののけ姫」のしんと深くて木霊の気配が漂う シシ神の森の 苔に覆われた木々や それに絡みつく花々、

室内から受ける無機質さとは異なる 生命の力のようなものが 小さな背景画から迫って来るようでした。

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時をかける少女」の主人公の家の道路沿いの外壁いっぱいに咲く古めかしくも華やかな植栽の庭など、背景画やイメージボードは 吸い込まれるように美しい水彩画でした。

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(以上は、展覧会撮影用のボードとパンフレットの写真です)

 

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海水温度が高くなっていると聞きましたが 季節は巡り、桜の葉が栗色になってかさかさと落ちてきました。ここ数日で朝夕の空気が軽く感じられます。

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しばらく 桜の落ち葉を毎朝掃き集める日が続きます。

美術館のお話の時は、つい長くなってしまいます。ごめんなさいね。ご覧くださいましてありがとうございます。

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「存在を超えた無限なもの」(68×69cm)


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「存在に還える無限なもの」(68×69cm)

草野心平 詩抄  村上翔雲 書  

明石市立文化博物館所蔵(作品33 34)

百日紅と小さなお堂

こんにちは。

前回は、たくさんの方にご覧いただきコメントをいただきまして ありがとうございました。ブックマーク、スターもたくさんいただきました。悩みながら書いただけに、本当に有り難いことと思いました。皆さまに心から感謝いたします。

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☀️

日中は ミンミンゼミが、辛抱強い鳴き声で鳴いています。

薬師堂の斜面に桜の木が植えてあり、野鳥や虫が住んでいます。ミンミンゼミにアブラゼミの声とツクツクボウシが重なるように聞こえてきます。クマゼミは 今年は聞こえてこないようです。

今の季節は、時間によっては マムシ(こちらでは、はめ と呼ぶ人もおられます) と鉢合わせをするので、すぐに草まみれになる無人の薬師堂の敷地へは入ることはできません。

マムシなど長いものについては、時々ご近所からいろんなお話をお聞きします。我が家でも一昨日、ヤマカガシの子どもが 礼儀正しく玄関から訪問しようとしていたなど (なぜそれを 連れ合いは今日まで教えてくれなかったのか…) 話題に事欠きませんが、知りたい方はいらっしゃらないでしょうから やめておきましょうね。

 

🌿

お盆が過ぎたある日の 少し涼しくなった朝 (6時半くらいのものですが) 、久しぶりにカメラを持って 近所を歩いてみました。

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露草が群生しているところです。昼間は花の姿も見えない緑の草叢ですね。

広がって繁茂するため、すぐに刈られてしまう野の花。つぼみを包んだぷっくりとした若緑の苞葉がかわいらしいです。

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露草の花びらは、明るい青に朝の光が溶け込んだようにパールがかかっています。

花開いた露草は、見るほどに涼しげでした。

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こちらは ユウゲショウでしょうか。露草と一緒に咲いています。夕方に咲くとは限らないそうですね…。

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去年 朝日の中で美しく咲いていた百日紅。今年も出会えました。

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この木は どんなに暑い日も静かな面差しで咲いています。手の届くところの花を仰ぎ見ていると 夏の疲れを忘れさせてくれる優しくてたおやかな風が仄香ります。

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🌿🌿

この近所に見てみたいところがあり、翌日 改めて見に行ってみました。

崩れかけの茅葺き屋根の上に 濃桃色の百日紅が盛んに咲いています。

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子どもたちが小さい頃は、土壁もあり 建物らしかったのですが、今は柱だけを残してひっそりと建っている茅葺き屋根の小さなお堂です。

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こちらには牛の神さまを祀っていると義母から聞きました。昔は馬喰(ばくろう・ここでは 養牛ですね)さんが何軒もおられたそうです。

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釘を使わないで建てられているとのことです。今は建て直すお金がなくて崩れるままになっています。

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屋根の裏です。

 

欄間のようにも見えます。
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草の中に立っていると、ただ ツクツクボウシの声が聞こえてきます。

 

🌙

夜 偶々外に出てみると、玄関灯の下辺りの外壁にぶつかって滑り落ちるものがいます。

植木鉢の間で 仰向けになってバタバタしていました。大きなトンボだなと見ていると、すぐに立て直して玄関の中に入って来ました。連れ合いが自分の手に捕まらせて写真を撮ったものを送ってくれました。

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この辺りでは、あまり見かけない虫です。ギンヤンマでしょうか。写真を撮った後 庭のもみじに止まらせました。

 

***

義父が 療養型の病院にお世話になって3ヵ月が過ぎました。入った頃は、自分で栄養が摂れないので あと1ヵ月ほどかもしれませんと言われていました。それでも おかげさまで 自分で少しずつ食べるようになり、そのまま過ごすことができています。

長らく会えていないこともあり心配は尽きませんが、落ち着いている様子を 担当の看護師さんから教えていただき ほっとするとともに感謝しています。

 

夜の薬師さんからは、ヒッヒッと聞こえる多分カネタタキの仲間や、エンマコオロギ、高い音のマツムシ、小さく鈴虫の声が聞こえてきます。

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こちらでも久しぶりに雨が降りました。雨上がりは蒸しますね。お体 大事になさってくださいね。

いつもご覧くださいましてありがとうございます。

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今年は サギソウがまだこんな感じです。咲いてくれればいいのですが…

 

 

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「何の木の花とはしらず匂うかな 芭蕉の句」(340×240m/m) 笈の小文 松尾芭蕉

 

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「かなかなのひとつ啼き澄み塔ありぬ 三樹彦の句」伊丹三樹彦 句    村上翔雲 書

くずれぬへいわを

こんにちは。

暑い日が続きますが、お元気でいらっしゃいますか。

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この時期、「カラスの山」から、「ヒグラシの山」になってしまう手前の丸い山の裾に広がる田んぼが美しく育つさまを眺めながら歩いています。

例年なら あちらこちらの田んぼで山田錦の幟が立ちますが、日本酒の売り上げの不振のための減産とのことで寂しく感じます。背の高い酒米 山田錦の姿を今年は見かけません。

夕方遅くに 少し気温が下がると、ここから さざめくような蜩の声が聞こえてきます。

 

***

この度は、父の作品のことで かなり個人的なことを書き留めております。長くなり申し訳ありませんが、よろしければ どうぞおつきあいくださいね。

 

7月の終わりに、明石市立文化博物館に父の作品 51点を収蔵していただくことになりました。

広島県出身で 後に越した山口県岩国市に実家のある父は、兵庫県神戸市へ移ったあと 明石市に終の住処を得て、亡くなるまでの33年ほどを過ごしました。

明石ゆかりの書家として、収蔵してくださった明石市立文化博物館の皆さま、ありがとうございました。当日は 作品の写真を撮る許可もいただき、長い時間をかけて丁寧におつきあいくださいました。

 

父が亡くなってから 9年が経ちましたが、

その間 お忙しい中にも関わらず、ずっと父の作品の保存のためにご尽力いただきました名筆研究会の 井元祥山先生をはじめとする先生方のご熱意と、妹の父の作品への強い強いきもちに従うようにして 私も微力ながら作品の記録などを手伝わせていただいてきました。

 

先生方は 所蔵していただく作品として、柿本人麻呂 (明石には「人丸(ひとまる)さん」と親しまれている柿本神社があります) の歌や、松尾芭蕉種田山頭火永田耕衣、石井峰夫、西脇順三郎などの句や詩による、父の代表作を選んでくださいました。

名筆研究会の先生方には、この間 数えきれないほどの作業や 博物館の方とのお話し合いを前に立ってしていただいたことや、その都度ご足労をいただいておりますことを心から感謝いたします。

 

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そして、私の拙いブログをご覧くださる皆さまからは いつも励ましをいただきまして「野の書ギャラリー」を続けてくることができました。

こんなささやかなブログをご覧いただくことは とても有り難いことなのだと しみじみ感じております。

いつもありがとうございます。

 

***

この度、この件で 普段は記事の後にお名前を拝見するだけだった神戸新聞社 明石総局記者の吉本さんに博物館で取材していただき、家族から見た父についても少しお尋ねいただきました。

後で、版が違うから我が家では手に入らないかもしれないと 掲載された新聞記事を送ってくださる方もいらっしゃいまして 感謝して拝見させていただきました。      妹が 私のスマートフォンでも様子をこっそり撮ってくれていましたが、取材してくださる吉本さんに対して なぜか頭を押さえながら四苦八苦の態でお答えしている様子に見えてしまう私 (ちゃんとお答えせねばと とろい頭で必死に考えていたのは確かです…)がどうにもお見苦しいので、その写真は控えます。妹はなぜその瞬間を撮ったのか…

 

父の作品をものする姿勢は、家族から見てどういうものであったかと、他の方からも時折お尋ねいただくことがあります。

 

生前の父をご存知で、ご覧になられるとご不快に思われる方がいらっしゃるかもしれません。それでも、私は 家族として この機会にこのようなことも飾らず書き残しておきたく思います。

 

優れた芸術家は、大勢、本当に大勢いらっしゃいます。

ご存知の通り美術館や博物館の収蔵スペースは限られていて、その上 紙の作品は湿度管理や害虫対策など 保存するためにはかなりの手間とお金がかかります。

始めの方に少し書きましたが、父が亡くなった後、遺された作品をどうするのか、私には取り立てて考えはありませんでした。

 

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父は情が深くて家族を大切にしてくれる人でしたが、感情の吹き出しようには とてつもない苛烈さがあり、

作品を突き詰めるためには、また自分の意志のためには、へつらいや妥協はもちろんのこと、日常さえも撥ね付けて飛ぶ矢のようなものであったと、家族として感じております。

どこのご家庭でも程度の差はあっても このようなことはよくあることと思います。

何の才能もない私は、普段の父を悪く言うつもりはなく、今はなるべく多くの作品を保存していくために書家としての父の人生を辿り続けているだけに過ぎない者ですが、そんな私から見ても

父は ただひたすらに道を求める人生だったと思います。

よく印象に残っていますのは、晩年になって何度も入院した時に 看護師さんやスタッフの方々で希望されることがあると、喜んで自筆の書道や硬筆の手本をコピーしたものを差し上げていました。

皆さんも繰り返し練習してくださっていたようでした。感謝の言葉も度々いただき、父は「いろんな人に書を楽しんでもらうことが仕事だから」と嬉しそうに申しておりました。

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初めて 父について書いたような気持ちがいたします。このブログの成り立ちの性質とは言え、個人的過ぎる堅いお話になりまして ご覧くださる方には本当に失礼いたしました。

 

 

🌿🌿🌿

今年は、終戦から75年ですね。

自分の子どもたちが大きくなるに連れて、

我が家の墓地にある 天辺が四角錐になったお墓を掃除する時に、そこに眠っている 義父の長兄の「種ちゃん」(またもや勝手に 私だけがそう呼んでいます) に話しかけるようになりました。

お盆の前、杉林を抜けたところにあるこちらの墓地の蝉時雨はツクツクボウシです。少し湿りのある濃い緑の匂い。照り返しが眩しいです。

種ちゃんの時間は、数えの23歳で止まっています。ソロモン諸島の激戦地ブーゲンビル島で戦死したと墓石に刻まれています。

連れ合いも私も確認していませんが、多分お骨はありません。

 

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戦争や紛争は、いまも世界中で止む間もなく続いているけれど、年齢などに関係なく 誰にとっても人生はかけがえのないもの。

親でもある私は、これから広がる未来があって 毎日が新しくて 悩みも楽しいことも全身で生きる年頃の人には、どうしても幸せでいて欲しい。誰もこんな目に遭って欲しくない。

心からそう思います。

 

 

今日は、所蔵されておられる明石市から許可をいただきました寄贈の作品から、早速披露させてください。(所有者は変わっても、著作権は別で 死後70年は私ども遺族に所属するのだそうですが、こんな日が来るなんて夢のようです。)

 

この詩を書で表現した 拳を固め飛礫の前に向かい立つような作品を 私などが出させていただいて良いのか。なかなか思い切れなくて、ブログにあげるまで長くかかってしまいました。

 

 

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「ちちをかえせ 

 ははをかえせ 

 としよりをかえせ 

 こどもをかえせ 

 わたしをかえせ 

 わたしにつながる

 


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 にんげんをかえせ 

 にんげんの

    にんげんのよのあるかぎり 

 くずれぬへいわを 

 へいわをかえせ」

 

(69×135cm)  

原爆詩集 序   峠三吉 詩  村上翔雲 書     

       明石市立文化博物館所蔵 (作品11-1.2)           

 

 

今日も ご覧いただきましてありがとうございます。

               野の書ギャラリー

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