こんにちは。
こちらでも秋の声がころころと聞こえてきそうなほど澄んだ空が見られます。
少しまるくなってきた月は、南の空を渡り次第にゆっくりと沈むようになりました。
お元気でいらっしゃいますか。
前回は、詩と書にたくさんのご感想をいただきありがとうございました。
詩人の今村欣史さんと 父の写真に、感動しましたとのコメントをたくさんいただいたことを 伝えさせていただきました。
皆さまに感謝いたします。
日本海側の静かなところで過ごしたくなって出かけてみました。先月末のことです。
お宿は、時々お世話になるところです。以前のブログでご覧くださった方には、繰り返しになりまして。
週末のよい季節でしたが、ほかのお客はひと組だけでした。
部屋の外の芙蓉。虫食いの葉の先には芋虫くんが…🌿
女将さんが気を遣ってくださって、舟盛りには秋が深まるとまた旬が巡ってくる鰆やうすばはぎ、剣先イカ、マグロなどが盛り込まれています。
右奥にちらっと見える鰆の身は ほのかに赤みを帯びた澄んだ色。長らく白身のお魚と思っていましたが、その身からは じんわりと広がる濃い旨みを感じます。 今更ですが 鰆は赤身魚(青魚)だったのですね。
うすばはぎの揚げ出しやアワビのお刺身に但馬牛、ノドグロの塩焼きと、目も楽しませていただきました。
仲居さんが「冬になると けあらしが出ます」と、昏くなってゆく湾の向こうの霞んだ海岸線を見て言われます。けあらしは 北海道だけの言葉と思っていました。 歳だけは取りましたが、知らないことは まだまだ多いようです。
波の静かな夜。日暮れた後もイカ釣り船の灯りは見えませんでした。
翌朝 女将さんにまた伺いますねと感謝をして 京丹後の久美浜へと参ります。
道路沿いの9月の末の久美浜の梨は そろそろ終わりの頃でした。それでも時折、実を紙でくるまれた梨の木を見かけます。
道沿いの田んぼの稲は、まだほのかな緑を含んで穂を下げていました。今頃はもう収穫も終わっていることでしょうね。ナビに従い秋の気配の山へと進みます。
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和久傳「森の中の家 安野光雅館」は 谷工業団地の看板が立つ角を入ります。
こちらは、 京都の料亭 和久傳さんが、誕生の地 久美浜に一から美しい森を造られ 風景に溶け込むような黒い杉板の美術館を建てられた場所とのことです。
ここは、安野光雅さんの作品を集められた美術館です。
美術館は久しぶりです。最後に美術展を観たのは、去年の今頃の京都伊勢丹キスリング展だったとしみじみ思い返しました。
安藤忠雄さん設計の森の中の美術館。
12月6日まで 追悼展「イギリスの村」をされているとのことでした。
中では 写真を撮れませんので、パンフレットと絵葉書の写真と、拙い説明だけになって申し訳ありませんが…
「絵は音楽…」と語られる安野さんの文が。
所々に、自筆の文章が架けられています。
「別れにはバッハの無伴奏チェロ組曲と人しれずこそ思ひそめしか」
百人一首の本歌取りの歌と気づくと とても楽しく思いました。館内には 静かにチェロの曲が流れています。
「森の中の家」のパンフレット表紙の絵。月に照らされる森の中 吠える狼。鹿に木菟。
森の前に広がるメドウ。
草原に揺れる花は、ポピーでしょうか。紙の肌の凸の上に つつじ色の絵の具が触れるように小さな点に描かれています。絵葉書にもなっていませんでしたので、ご覧いただけなくて残念です。水彩の優しい色。
絵の右下のプレートに、旅する安野さんの言葉が添えられているのを読むのも楽しい。
下は、追悼展のパンフレットと絵葉書の絵です。
リバプールの風景には、「ビートルズの故郷だから行ってみたかった」とのお茶目なひとことが。
ガラスケースの中には「大草原の小さな家」の原作「小さな家のローラ」の下書きのような絵が収められていました。
大自然の中で暮らす家族、子どものローラやメアリー、キャリーの姉妹の無邪気な笑顔や番犬のジャックがシンプルに生き生きと描かれています。
安野さんが、イメージを作るためにマッチ棒を組んで再現された ローラたちの家の小さな模型も飾ってありました。
川にいる生き物に混ざって、ぽってりとしたオオサンショウウオの絵。
隣りに置かれた「赤毛のアン」の明るい表情が愛らしいです。
絵本のための絵がなんとも幸せそうで、観ていると楽しくなります。
会場に飾られた最後の絵の傍に 栗色の椅子が置かれていました。 画伯が絵を描く時にいつも使われていたとのことでした。素朴な椅子でした。
安野光雅さんは 卓れた文筆家でもいらっしゃるのですね。
一階のチケット売り場が ミュージアムショップも兼ねていて、絵葉書と文庫本「片想い 百人一首」を買ってみました。
素晴らしいエッセイ集でした。本の感想はまた次の機会に。
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同じ敷地に 工房レストランがあり、早めのお昼をいただくことにしました。
レストランの其処ここに 森の植物が花瓶に挿してありました。
うずみ豆腐と丹後のお野菜 お米は「コウノトリ育むお米」とのことで、柔らかな豆腐や 小さく刻まれた野菜の食感、薄味のお出汁がこころよく思います。
お茶は こちらで育つ桑で作られた桑茶とのことでした。やんわりとしたドクダミ茶のような味が温かくて飲みやすく思います。
レストランのMORI (モーリ 桑の樹・イタリア語) のネーミングは、安野さんともお聞きしました。
並べてある調味料から、生姜糀を少し入れてみました。穏やかに味の変化を感じられて美味しいです。
和三盆山椒ソーダ。甘さ控えめのソーダと一緒に口に入る山椒の実が ほどよくぴりりと。
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帰りに、木下酒造さんに寄って 玉川を買って帰りました。 がっしりとした木造の酒蔵とお店。
こちらもお宿と同じく、以前 ブログに書かせていただいたことがあります。
看板猫さんが お出迎えしてくれました。まず私にもお愛想をしてくれた後、おもむろに連れ合いの方へ歩いて行ってからのポーズが可愛すぎます。
うちでは魚しか飼っていませんので、不思議な格好だなぁと 我が家のぽんすおじさんは、しっぽ近くの背中を撫でていました。
木下酒造さんの「玉川(たまがわ)」は、お燗が美味しいお酒です。
飲むほどに豊かな表情を見せてくれる生きているお酒 玉川は、お世話になるお宿で出されて知り ファンになりました。
左から「ひやおろし」、「生酛純米コウノトリラベル」、3年以上熟成の「ビンテージ」
ひやおろしは、この時期の贈り物。
ほんのりと実りの稲穂の黄金色を帯びるお酒は、口当たりの良さと香りがまず初めに。まもなく くっきりとした辛口へと収斂していく変化の楽しみがあります。 きりとした印象のお酒でした。
杜氏さんは、イギリスの方。フィリップ・ハーバーさんとおっしゃっる方だそうです。ハーバーさんによって江戸時代のお酒が再現されていて、冷蔵庫に琥珀色のお酒の瓶 Time Maching Vintageが並んでいました。
以前 許可をいただいて撮らせていただいた写真。美しいお酒です。
今日もご覧くださいましてありがとうございました。
この度と次回の書は、10月1日から10日まで 元町の兵庫県民会館アートギャラリーで開かれていた「名筆研究会展」の先生方の作品からご覧ください。本当に申し訳ないことに私は都合で伺っておりません。(以下は妹が撮って来てくれた写真です)
「夕雲の歌
赤い冬の夕陽は
濛氣に滲んで
その色いよいよすさまじく
満目の自然また
熱なく燃えて 富田砕花の詩抄」 名筆研究会会長 井元祥山先生 書
「色彩は生まれる
光と闇の 相互貫通から サム・フランシスの詩」 六車明峰先生 書
「ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠く
せめては新しき背広をきて
きままなる旅にいでてみん。
汽車が山道をゆくとき
みずいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若葉のもえいづる心まかせに。
朔太郎の詩 瑛子かく」廣田瑛子先生 書
「全世界に行き すべての者に福音を宣べ伝えなさい マルコ伝」村上翔雲 書 パンフレットより