野の書ギャラリー

書家村上翔雲の作品を少しずつご紹介させてください。日々の雑感もほんの少し

お寺と美術館

こんにちは。

12月の声を聞くと 夜6時には とっぷりと暮れた夜空に 冬の星が美しくなってきました。

 

先週 22日の木曜日に 丹波市柏原町円成寺に参りました。

この度は 観光ではなく、先祖の供養をしていただくために伺いました。

初めて伺う お寺でしたが、小さいながらも手入れの行き届いた美しいお寺です。
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お寺の中も美しく、大きな天蓋が下がっているのが印象的でした。 檀家の方に しっかりと守られているお寺だということで、きっと義母が安心してくれると思いました。
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蹲踞のまわりに つわぶき。


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山あいの静かなところです。若くして 戦死された義母の父のことを思います。
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翌23日 勤労感謝の日の朝に、京都へ向かいました。

自動車道路を走ると 紅葉が進んでいて、明るい日差しのもと  山がきれいに輝きます。

珍しく 名神高速道路の上り天王山トンネル手前から、べったりと動かなくなりました。そこから京都南で降りるまで 1時間かかりました。(普段の日曜日なら混んでも30分くらいですか。3連休の方も多かったのでしょうね。)

 

京都国立近代美術館では、12月16日まで

藤田嗣治展」を開催しています。f:id:snow36:20181126153535j:image


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「タピスリーの裸婦」乳白色の肌。猫。  写真スポットですね。

逆光になって 少し見えにくいのですが、裸婦の後ろには布が描かれていて、おそらくヒナゲシヤグルマギクの優美な花模様のこの布は 職人が手染めする西洋更紗とのことです。

画伯が 37才の頃の作品なのだそうです。

 

藤田嗣治 没後50年とのことで、130点もの作品が 年代順に 展示されていました。

館内は混んでいました。フランスのお客を時々お見受けいたします。

 

 1929年(昭和4年)49才の作、おかっぱ頭の「自画像」に近づいて見ると、シャツのしわ、画伯の後ろから覗き込む猫の ふわふわとした毛並みが 繊細に描き込まれています。猫の表情や 画伯の手の形が 戯画に見えるような気がします。

手に 面相筆、木目が描かれた机の上には 硯と墨。ペンたてにも 何本かの細い筆が立っていました。  面相筆を持って、脇に猫を、こんな風に線描が作られていたのでしょうか。

驚きの美しさでした。油絵なのに日本画の 柔らかさ。  藤田嗣治の世界に 引き込まれていきます。 

これは 絵の前に立って 近づいて観てこその感動だと思いました。

 

 

第二次世界大戦の時に 描かれた茶褐色の大作「アッツ島玉砕」1943年(昭和18年)57才の作 (193.5×259.5cm)は、荒く波立つ海を背景に 死んでいく人びとで埋め尽くされた 音の感じられない異様な世界が 静かに迫って来ました。

その場にいなくても この凄まじい有り様を描くことができたそうです。

 

前日 円成寺に伺って供養をお願いした義母の父は、アッツ島のあるアリューシャン列島で亡くなったのではありませんが、この時代の この戦争で 命を失った人びとのひとりなのだということについて しみじみと思いを巡らせました。 

 

一連の 戦争画 を描いたことで 戦犯を免れはしたものの 日本を追われるように藤田画伯は、 再びフランスに渡り、制作を再開したそうです。

フランスに行く前に 滞在したニューヨークで制作された「カフェ」 1949年(昭和24年)63才の作。

食堂に集う人びとの何気ない日常を切り取った絵「ビストロ」1958年(昭和33年)72才の作 は 会話が聞こえてきそうなほど 臨場感を感じる表現が 魅力的でした。

 

晩年は キリスト教に改宗したとのことで 制作した宗教画が多く飾られていました。

 

エソンヌの自宅で 奥さんの君代さんのために 絵付けをした陶器の皿やワインの杯が 擬人化された猫の絵柄で とても愛らしい。

 

特別展示では、藤田画伯と同時代の画家の作品もありました。

出口と記した辺りに、キスリング、モディリアーニユトリロピカソシャガールなど 1〜2点ずつでしたが 展示されていました。

 

 

絵葉書は あまり置いてありませんでした。

図録の表紙は「カフェ」。この作品は デッサンと並んで展示されていました。

「カフェ」は 画伯の手作りの額縁に入っており、額縁には カップとソーサーや 足つきのグラスにスプーンが入っている彫りなどが施されていて、とても素敵です。  額縁は、他にも手作りされていたそうです。

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平安神宮の鳥居と 藤田嗣治展のモニュメント。


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向かいの 長らく改修工事中の 京都市美術館。優美なエントランスだけが 見えていました。


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国立近代美術館のお隣は、図書館ですね。

 

この後、美術館の帰りに 時々寄らせていただく 小さなお寿司屋さんに行きました。

 

拙い感想が 長くなってしまいました。

制作の年と、絵のサイズ、そして 藤田嗣治画伯についての文に関しては、図録を拝見し 参考にさせていただきました。

お付き合いいただきまして、ありがとうございます。

 


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  「ソロモンの栄華の窮みも百合の花の一つに及ばない」(105×150m/m) 聖句  村上翔雲 書