野の書ギャラリー

書家村上翔雲の作品を少しずつご紹介させてください。日々の雑感もほんの少し

下山手通りの風景

こんにちは。

兵庫県公館は、神戸の元町 下山手通りにあります。

道を挟んで 山側には ゴシック様式の建築、メゾシスト派の神戸栄光教会が 建っています。震災で被災しましたが、2004年に再建されました。

f:id:snow36:20190312203155j:image

兵庫県公館は 1902年(明治35年)に建てられ、兵庫県本庁舎として使用されたとのことです。(現県庁は、教会の更に 山側ですね。)

昔 この近くで働いていましたので、周辺には 特別な思いがあります。

とは言うものの、県公館の中には 入ったことがありませんでした。

この度、こちらで 開催されている 詩人 鈴木漠さんの企画展で 父の作品が出ているとお聞きして、初めて行ってみました。

「活字表現タイポグラフィーとしての詩展〜鈴木漠の世界〜」

 

兵庫県公館東面です。ルネサンス建築と聞いています。

f:id:snow36:20190312203236j:image



f:id:snow36:20190314105338j:image


f:id:snow36:20190312203313j:image

こちらは 山側の入り口です。近すぎて 全体が写っていません。失礼しました。せめて雰囲気が伝わればと思います。

海側の正面も 華やかで素敵なのです。ドラマに使われることもあるそうです。

元町、三宮から、六甲山を望む北は 山側。南は、海側ですね。

 

中に入ってみると、灯りを抑えた館内は 洋式の重厚さがあります。ずっしりとした褐色の扉が 並びます。

北の玄関フロアには誰もおられませんでした。右手の広い部屋を通り抜けて、廊下に出ます。

灯りの色のためか 柱も壁も柔らかい卵色に見えて、暗さはありませんでした。

 

元町の海側に建つ古い建物も 最近は古着を扱う小さな店が たくさん入っていることを ふと思い出しました。

昔は、南北に伸びるトアロードにも アンティークのアクセサリーを置くお店などがあって 何度か通いました。趣の変わりようを感じます。

つい、思い出に浸ってしまいました。取り残されていますね。神戸に時々参りますが、今も 大切にされている美しい街なのです。

 

 

県公館に お話を戻しましょうね。

奥の「展示室7」と書かれた部屋の扉が 開いていました。誰もいなくて、ひっそりとしています。

 

鈴木漠さんの上梓された詩集が ガラスの陳列ケースの中に置かれています。

表紙に、パウル・クレージャコメッティの作品がデザインされていて、とても懐かしい気持ちになりました。写真は遠慮しましたが、いずれも父が好きな画家でした。父の仕事部屋の本棚に 画集があります。


f:id:snow36:20190314184655j:image

パウル・クレー「青い眼の魚」(1938年)13×24cm 油彩  みすず書房 現代美術7  昭和38年10月15日 第7刷   ¥500

詩集の表紙に使われている絵でした。

愛らしい絵ですが、魚はキリスト精神のシンボルだったという考えがクレーの心にあったそうです。(画集 解説より)

鈴木漠さんは、詩作もされますが、何人かで「五・七・五」「七・七」の句を作って繋いでいく 連句を作られるとのことでした。

何人かの詩人と作られた連句集「壺中天」を 実家で拝見しました。それぞれの詩人の感性が共鳴し合う、たいへん美しい表現方法と思いました。

 

 

父の後を引き継いでくださっている名筆研究会の先生が 鈴木漠さんの詩を書いた作品が 展示されています。
f:id:snow36:20190312203414j:image

井元祥山先生の書


f:id:snow36:20190312203430j:image

六車明峰先生の書

 

こちらは、父の作品です。
f:id:snow36:20190312203508j:image


f:id:snow36:20190313200108j:image

「風景論・眺め」

眺めていると 木に懸けられた人は 上空へ もっと上空へ羽博こうとしている

開いた腕をそのまま翼と化して

だのに数本の釘が それを繋ぎとめている

てのひらに打ちこまれ

f:id:snow36:20190313174626j:image

骨を割り 風景を突き刺した釘たちは 静かに発熱しているとわかる 

他界にめりこんだ釘の ふるえる舌先は見えないけれど

想念は そこ聖痕のあたりで 静かにあわだっているとわかる     鈴木漠 詩抄

   

 

 

帰りに 久しぶりに 三宮のジュンク堂に寄ってみました。

美しい文章を読みたくなる時があります。

どなたにも、リセットしたい時に ぜひ必要というものがおありでしょうね。

私も そんな時に 手に取る本があります。例えば、夏目漱石のお弟子さん 野上弥生子さんが、92歳の頃に上梓された随筆だとか。1977年。   古すぎるでしょうか。

それでも、枯れることを知らない端正な文章には、誰も真似のできない 本当の輝きがあります。

 

書店に立ち寄ると必ず時間を忘れてしまいますので、都合がつかずに 半年を待つこともあります。手に取ってみたくて、やっと出かけて 気に入った文庫本を買う。 これは ささやかでも贅沢。

この度は、野上弥生子さんの流れから やはり漱石のお弟子さんであった 寺田寅彦さんの随筆を 久しぶりに読みたくなって探しに行きました。それと 文庫になったばかりの比較的新しい作家の小説。

自分の時間は、どなたも意識しなければ作れないものですね。

今の私が忙しいと言えば、ばちが当たります。けれど、都会に本を買い求めに出かけることは、大袈裟かもしれませんが、仰ぎ見る月ほど離れているような気がすることがあります。

でもきっと、たまに出かけるから 毎回新鮮で楽しいのですね。

 

他にも 用事はありましたが、遅くなりそうなので、まあいいかと 重たい幸せを抱えて帰りました。

今日は、書道のお話が中心になりました。私は 系統立てて学んでいませんので、わかりにくく 退屈な内容になってしまいましたことをお詫びいたします。

 

ヒメリュウキンカが ひとつ咲きました。親指の爪ほどの小さな花です。f:id:snow36:20190315010102j:image

 

🌿

一昨日 ブログを始めてから、一年が経ったとのお知らせをもらいました。

最近 毎週のように 何かの記念日だと言い過ぎております。申し訳ありません。

でも、これは ご覧くださっている皆さまのお陰で 続けさせていただいていることですね。

いつも ご覧くださいまして ありがとうございます。そればかりか、スターや 優しいコメント、ブックマークまでいただき ありがとうございます。本当に書くことが下手で、肝心なことが ちゃんと伝わらない私ですが、とても嬉しい気持ちです。一年前に 今も書き続けているなどと思いもしませんでした。

皆さまに 心から感謝申し上げます。

 

どうぞ  皆さまが 今日も楽しい一日を過ごされますように 。😊