野の書ギャラリー

書家村上翔雲の作品を少しずつご紹介させてください。日々の雑感もほんの少し

コウノトリに会いに行く

こんにちは。

f:id:snow36:20210912140719j:image背の高い酒米 山田錦が実り始めています。

数日前の晴れた日に歩いた時の様子です。吹く風が軽く感じられました。

お元気でいらっしゃいますか。


f:id:snow36:20210913180450j:imagef:id:snow36:20210913180448j:image満開の小さなニラの花がかわいらしいです。

こちらでも 夜になると薬師堂から鈴虫の鳴き声が冷えた空気に染み入るように聞こえるようになりました。

 

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田んぼの写真が続きまして。これは 兵庫県豊岡市祥雲寺での写真です。

先月 久しぶりに時間ができたので、コウノトリを見に出かけました。よろしくおつきあいくださいね。

 

コウノトリの郷公園(こうのとりのさとこうえん)」は、豊岡市祥雲寺と言う地区の田園の中にあります。

1971年(昭和46年)に最後の野生の一羽が怪我で死んだことにより日本から絶滅したコウノトリを 歳月をかけて繁殖させて再び自然へ帰すことを続けておられる施設です。

同じ敷地に 兵庫県立大学の大学院があり、地域資源マネジメントについて研究をされているそうです。

豊岡市から日本海へ流れ込む 円山川(まるやまがわ) のある豊岡盆地では、今年 野外で繁殖して巣立ったコウノトリは 13カ所で26羽とのことで、

今年の6月には淡路島でも巣立ちが見られたとも聞きました。

 

自然の中で暮らすコウノトリに偶然に出会うのは、まだまだ難しいことですが、こちらでは放されて暮らす様子を見ることができますので、日本海側へ出かけた帰りなどに時々立ち寄らせてもらいます。

コウノトリの郷公園に造られたビオトープで餌を摂る姿は シラサギ(ダイサギ) に似ていますが、かなり大きく感じます。

本来は、あまり警戒しない鳥なのだそうです。運が良ければ近くで見られるようです。

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実際に飛んで来ています…  写真に撮ると小さくなりまして。

 

館内では、来場者のために コウノトリについて説明を受けながら場内を案内してもらえる見学ツアーがありました。

ビオトープやため池が見渡せる広いテラスの前に10人ほどが集まり、中には小学校低学年くらいの男の子もいました。皆さん 自然と距離を取って立ちます。

 

お話でお聞きしたのは、空を飛ぶ際に少しでも体を軽くするために、鳥は骨の中が空洞になっていること。

ヨーロッパのコウノトリ(シュバシコウ・朱嘴鸛) は、クチバシが赤く、体も少し小さいこと。

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左がヨーロッパのコウノトリですね。

日本のコウノトリは、目のまわりが赤くて目が鋭く見えました。

他にもコウノトリが、どこでいつ何羽巣立ちをしたかなど 工夫された表が張られてあったのが丁寧でとてもわかりやすかったです。

コウノトリは、一日に 500gを食べるそうで、こちらでは田んぼやビオトープから自分で探して食べたり、アジやドジョウなどを飼料として与えているとのことでした。

動物性のものを食べますとのお話を聞いていますと、「ヘビ、セミ、カエル…」と男の子が小声で言いに来ます。

ちょっと遠慮がちなのがかわいらしいです。

「その通りです☺️ 」と説明してくださる方がにっこりされます。

このあと、このような感じのやりとりが 男の子と説明される方との間で 何度かあり、おとなばかりの場がとても和みました。

一生懸命にメモを取られていたお母さんが「これ!」と注意されていましたが、お子さんの詳しさに他の方も驚いておられました。

f:id:snow36:20210916093335j:imageガマズミ

コウノトリは、江戸時代までは日本で普通に見かけられたとのことでしたが、

絶滅した理由としては、明治時代以降に狩猟の対象になったことと、巣をかけるアカマツの木が 戦時中に多く伐採されたこと。

稲作などで農薬が使われるようになり、使用が禁止される以前に農薬に含まれていた水銀で 餌となる生き物が水田から絶えて餌が無くなった上に、コウノトリの体にも影響が出たこと 。

また、田んぼを踏み荒らす害鳥として駆除の対象にまでなっていたとのことでした。

敵らしいものがいなかったから、長らく日本の空を飛んでいたコウノトリ

仕方のないこともあったでしょうけれど、どの理由もすべて私たち人間から起こったことなのですね。

 

豊岡市に僅かに残った数羽とロシアからもらい受けた数羽から始まった繁殖は苦労の末に成功して、今年の7月末の時点では、日本中で257羽(うち26羽が豊岡で生まれた) が確認されているとのことでした。

今年は、関東の栃木県の渡良瀬遊水地でも、巣立ちが確認されたとのことでした。

ロシアや中国にいるコウノトリと同じ種が日本で見られるもので、このコウノトリは世界では 3,000羽ほどいるとお聞きしました。

 

屋内での説明の後、私たちが初めに行ったビオトープへ移って説明をされるとのことでした。 私たちは そこから離れて

1965年(昭和40年) 当時の保護センターの方々が、繁殖のために捕獲した野生のコウノトリに「いつか必ず野に帰してやるから」と約束して飼育し始めたという「約束のケージ」を再現されたドーム型のケージのあるところまで歩いてみました。

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途中、高いところに作られたコウノトリの巣塔を見ました。 

f:id:snow36:20210915232713j:imageこちらは、建物の入り口のそばに置いてありました。直径2mはあるそうで、実物大の巣だそうです。

f:id:snow36:20210915233002j:image道沿いの疏水に 小さなハグロトンボが。よく見かけるトンボですね。緑深い気持ちのよい散歩道が続いています。

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f:id:snow36:20210915233208j:image湿地が広がっています。

f:id:snow36:20210915233405j:imageドームのこちら側から向こうは、コウノトリの飼育場のために立ち入り禁止区域になっていました。
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f:id:snow36:20210915233402j:imageコウノトリは、30年以上生きるのだそうです。

 

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f:id:snow36:20210913175712j:imageまたもや不鮮明ですみません。雰囲気だけでもお伝えできましたら。

こちらは コウノトリの郷公園のエントランス近くの祥雲寺の田んぼにいたコウノトリです。冒頭のものと同じ鳥の写真です。

帰りの車の中からスマートフォンで動画に撮ったものを切り取りました。

端から端まで2mある翼を広げた悠揚とした姿で低く飛ぶ様は、近くから見るとかなりの迫力がありました。コウノトリは鳴かない鳥なのですね。

祥雲寺一帯の田んぼでは、コウノトリのためにも これからのためにも 無農薬か それに近い環境で稲を育てておられるそうです。

若い頃に田んぼや畑仕事をしていた義母から「無農薬で田んぼをしたら どんなに良いかと思うけど、お金や手間が掛かってなかなかできないことやと思う」と聞いたことを思い出します。

こんなに大きな鳥が、人家近くを好んで巣を掛けて自由に暮らしていた時代。絶滅した生き物を再び元に戻すことの長く続くご苦労を思います。

幸せを運ぶと言われるこの鳥が、これからも私たちの近くで見ることができるようになりますように。

 

f:id:snow36:20210913180003j:imageセンニンソウの白い花。季節ですね。家の近所を歩いていると、黒豆畑の仕切りのネットに絡みついて咲いていました。 

畑の中でしたので、先週の道普請(村の一斉の雑草刈りです) を免れたようです。日本のクレマチスの原種と言われながら、野に咲く花は 度々雑草になってしまいますね。今はお彼岸で曼珠沙華が満開です。

また長くなってしまいまして。

おつきあいくださいまして、ありがとうございました。 雨台風 小さく過ぎてくれますように

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「波乗りの鷗(かもめ)のむかし渡海僧 三樹彦の句」(200×300m/m)    伊丹三樹彦 句


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「現し身に地上逆風 六十年 三樹彦の句」(240×340m/m)   伊丹三樹彦 句    村上翔雲 書