こんにちは。
九州北部の集中豪雨の被害を受けられた方にお見舞い申し上げます。まだ 気を許せないのでしょうか。あちらこちらで強く降っています。どうぞ 被害が広がりませんように。
こちらは 強く降る時間も 少しありましたが、晴れ間もありました。
雨の止み間に 支流の川縁へ行ってみました。普段は、車で橋を渡る時に眺めることが多い お気に入りの場所です。
川の両岸には 桜の木が並び、冬の朝には 幻想的な霧が山を覆います。
今は とんぼが乱れ飛んでいます。トノサマガエルが ふたっと飛び歩いています。
夏の終わり、秋の始まり。
久しぶりに、絵を観に参りました。
ギュスターヴ・モローが 観たかったのです。
あべのハルカスで 9/23まで開催されています。
パンフレットと、一部 絵葉書を使わせていただいています。
ヘロデ王の前で 踊るサロメ。浮き上がる聖ヨハネの首を取ろうとする若い王女の横顔。息を飲むような絵でした。 かなり 強力です。美術館へ行くことを止めようかと思いましたが、
いつも楽しみにさせていただいているブロガーさんの記事を拝見して 行くことにしました。
少し お話させてくださいね。こちらのブロガーさんは、
「よろこん」さん
よろこんさんは 関東の方で、和洋を問わない美術の解説を詳しく書かれていらっしゃいます。
展覧会は 東京から 各地へ巡回することが多いので、まず よろこんさんのブログを拝見してから こちらの関西の展覧会を観に行くことにしています。
よろこんさんの 今年の4月の記事には、このギュスターヴ・モローの東京展のお話と、
5月の記事には、実際に訪れられた フランスの美しい「ギュスターヴ・モロー美術館」の 紹介の記事を たいへんわかりやすく書かれていらっしゃいますので、どうぞ よろこんさんのブログの「月別アーカイブ」からご覧になってくださいね。
さらに 余談ですが、旅行のお話や 東京の街並みの美しい記事が とても魅力的で、
時々書かれておられる「男の一人飲み」という気さくでお茶目(失礼なことを。すみません)な記事に至っては、待ち遠しく思うほど楽しみにしています。
サロメに戻ります。(ごめんなさいね。絵が怖かったですね。でも、謝っていながら 説明するために、あと2回出てくるのです。)
聖ヨハネの首が浮かぶ「出現」
この主題のために、繰り返し描かれた素描も 作品もたくさん展示してありました。ムーア人のターバンを巻いた頭部、目を閉じたサロメのインド美術のような衣装。
裸体の素描もありましたが、そのポーズのまま 女性は 流れるような襞を重ねる衣装を身に着けた 横顔の美しいサロメの作品になり、男性は 聖ヨハネの首を切って服を血に染めた刑吏の姿になります。
油絵の上に描かれた ロマネスク美術の白い線描が繊細で美しいですね。
ギュスターヴ・モローは、エコール・デ・ボザール(フランス国立美術学校) で教鞭を執るようになり、ジョルジュ・ルオーや アンリ・マティスが 教え子として有名とのことです。
教え子の フォーブス(野獣派)の ジョルジュ・ルオーを思わせる 絵の具を荒々しく乗せた作品もありました。
ミュージアムショップで、モローとルオーの絵を 同じ主題で並べられた本がありました。輪郭を太く強く描くルオーは、私の父が特に好きで展覧会に連れて行ってもらったり、画集を見せてもらったので 好きか嫌いかを越えるほど 親しみを感じます。この本を買えばよかったかなと 少し後悔しています。
展覧会は、サロメに続いて 次々と繰り出される「自由な」女性たちが描かれた作品が並びます。
例えば、サムソンが眠っている間に その弱点の髪を剃るデリラの物語。 デリラは、ペリシテの領主たちに 夫であるサムソンを売り渡してしまいます。
帳の向こうから 弱く差し込む光が、室内を 暗がりに見え隠れする沼のように表現しています。
お金のために 夫を籠絡しようとするデリラの 褐色の肌と 昏く光る目が浮かび上がります。
美しい声で 惑わせるセイレーンは、海を眺めながら 足の代わりに体から生えている蛇の尾で 吟遊詩人オルフェウスに巻きついています。
男性を翻弄するのか、辿るその人生に 振り回されるのか。
渦巻く感情の重たいこと。少し疲れました。なんという業の強さであることかと思うと、男性であるギュスターヴ・モローの描く世界が 空恐ろしくもなりました。
それでも、パートナーである アレクサンドリーヌ・デュルーへの深い愛。
よろこんさんが、ギュスターヴ・モローの描く女性は アレクサンドリーヌに似ているとおっしゃっておられましたが、私どもも 同じ印象を受けました。どの女性も とても優しくて美しいのです。
そして、母 ポーリーヌを慕う気持ち。ポーリーヌへ送る習慣があったメモのような手紙が 作品を詳細に説明しているので、後の モローの作品研究に たいへん役立ったとのことでした。
それぞれの毒を放ちながら、女性たちの面差しの柔らかさ。優しさ。絵の中で 毒と花、別の方向を指していることが 抗い難い魅力を感じた美術展でした。
キリギリスがそろそろ終わって、カマドコオロギやマツムシの集く草むらも 今夜は 雨の中に静まっています。
蒔いた覚えのない花が 咲き始めています。植物は、弱いようでも 強いですね。
最後まで ご覧下さいまして、ありがとうございます。
「あのささやき蜜の巣の暗さ 女の世のなげかわしき 順三郎 詩」(200×300m/m) 旅人かえらず(8) 西脇順三郎 詩
「人に為られんと思うことは人にも亦(また)その如くせよ マタイ伝」(300×210m/m) 聖句 村上翔雲 書