野の書ギャラリー

書家村上翔雲の作品を少しずつご紹介させてください。日々の雑感もほんの少し

コーヒーカップの耳から…

こんにちは。

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ご無沙汰していた間に、ギボウシの花が咲いていました。ギボウシと言えば、大きな葉のウルイ(酢味噌和えなどですね) が浮かんできてしまいます。

 

以前 紫陽花の庭の方からいただいた寄せ植えの盆栽で ギボウシの前のイワヒバや 右のイワヤツデも少し育っています。

しばらくの間 愛らしい薄紫の花に和ませてもらいました。

 

*🌾*

新米の季節になり いつもお世話になる兵庫県多可郡加美区の農家さんに連絡をしてみますと、

ご主人が病気になられて 田んぼを続けられなくなったとのことでした。 

たいへんですね。どうぞお大事になさってください… と申しながら、我が家と親戚の一年分の玄米16袋の手配をどうしたものかと思いました。

普段から 住まいのまわりの田園の写真を撮らせていただいているのに、なぜ どうしたものかとなるのか…。

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ある年に、出荷の都合で足りなくなり 他所からお米を買うことになって (我が家にも田んぼが一反ありますが 専業の方にお任せしています) 、伝手を頼りに加美区の農家さんにお世話になりました。

より山深い静かなところで育ったお米は味わい深く、こちらのお米との食べ比べも楽しいものでした。

どちらもとても美味しいと思いましたが、家族は 加美区のお米を食べたいと言うので それから加美区のお米を買わせてもらうことになりました。

この度は 急なことでしたので、知り合いに さらに知り合いの方を紹介していただいたり、娘の同級生の親御さんに 売っていただけないかとお願いしたりして何とか買うことができました。

娘にお米の手配をしてもらう日が来るなんて 思いもよらないことでした。

f:id:snow36:20210926122332j:imageいただきに伺ったお宅の近くの風景です。我が家の辺りも変わらなく見えますが、水も空気もたいへん美しいところです。

友達の家の残りて故郷は花ぞむかしの香に匂ひける

         安野光雅 「片想い百人一首」ちくま書房  本歌取りの歌。

先の農家さんのように、私たちの方でも 親戚の家のまわりでも高齢化が進み、田んぼの雑草を刈るばかりのところが増えてきています。

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今日の父の書は、いつもとは違う形でご覧ください。

妹から 今村欣史先生の詩を 父が書かせていただいた初見の作品が出てきたと連絡がありました。

日頃から 父の作品整理をしてくださっている名筆研究会の先生方のお一人、六車先生が見つけられて、詩の作者 今村欣史さんの元へ届けてくださいました。感謝しております。

 

詩人の今村欣史さんは、西宮市で喫茶店「輪 (わ) 」を今年の春まで経営されていらっしゃいました。

今村さんや奥さまの気さくなお人柄から、多くのお客に愛され長く続いたお店とお聞きしています。(私も一度伺ってブログに書かせていただいたことがありました)

この詩が収録されている今村欣史さんの詩集 「コーヒーカップの耳」は、「輪」のカウンター越しに交わされる マスターの今村さんと常連さんたちとの 飾らない笑いや涙の物語です。

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聞き書きではなく、これらの詩は 常連さんおひとりおひとりの人生の言葉そのもので、

読み始めると、その臨場感に ふたつほど離れたスツールに座って聞いている「輪」のお客のひとりとなった気分になっていきます。

これからご紹介します詩は、若松さんとおっしゃる常連さんの心。

父も 何度も書の作品として書かせていただくほど惹かれた詩でした。

始めの一部分だけを 書にさせていただいております。(しかも省略もあり 字も変えた箇所があることに、今気づきました。今村さん 本当に申し訳ありません)

 

前置きが長くなりました。

皆さま どうぞよろしくご覧ください。

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「亮介 今村欣史 詩抄

俺の息子 卒業式の五日前に死んだんよ。

何で俺みたいな者に あんな子がおったんやろ。

今でも不思議な気がするんよ。

亮介言うんやけど 一歳の時 初めて手術したんよ

心臓の。 そやけど治らん言われた。

五歳の時にも手術して その間に頭も。

病院の付き添いは母親よりも俺に来てくれと言うんよ。

別に何してやる訳でもないのに そばにおるだけで喜んで。

そやけど辛(つろ)うて見とれんやった。

点滴の痕やらが痛々しいて。

生まれた時からそんなんやったから

本人はそれが普通やったんやろね。

痛い 辛い 苦しいゆうことは一言も言わんやった。

かえって親の俺に気い使(つこ)うて・・・」

「亮介 若松さん」コーヒーカップの耳   朝日新聞出版 今村欣史 詩 村上翔雲 書

 

回想する言葉から伝わるお父さんと闘病する子どもさんとの情愛に、尽きることのないお父さんの哀しみが重なって参ります。 静かな旋律のように感じられます。

勝手ながら、今村さんのブログをお借りしました。

心が忙しい日 - 喫茶 輪

blog.goo.ne.jp

拙い私のブログにご協力くださった今村欣史さんに感謝いたします

 

皆さま 今日もご覧くださいましてありがとうございました。               野の書ギャラリー

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