野の書ギャラリー

書家村上翔雲の作品を少しずつご紹介させてください。日々の雑感もほんの少し

小さな思い出

 

こんにちは。

時々 強い風が 吹いています。

台風の直撃を 心配しています。

 

京都国立近代美術館東山魁夷 を観に行きました。

生誕110年の記念回顧展ですね。

お彼岸の連休なのと 開催されるのが久しぶりだったためか、かなりの人出でした。


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「道」や「白い馬」の作品が 有名ですね。  

 

昼の絵は 仄かに明るむ灰色の色味のある 柔らかな薄曇り。

夜の絵の ぼんやりと滲む月明かりは、優しく森を包み込んでいます。手前には 静かな湖が広がり、木々を水面に写し取っています。同じ風景が下に向かっているのですが、別の森がその中に 現れているようです。

 

 北欧の風景や森を描いた絵も ありました。

白樺の白い枝が 月の光に映えます。音のない静かな冬。   

 

人物も描かれていない絵は ひっそりしているのに、呼吸を感じる温かさを感じます。 その前から立ち去り難くなります。

 

人がいないのに、人の温かさを 特に感じたのは、京都の町なかの連なる屋根を描いた「年暮る」  という作品でした。

年末の町の夜更け、屋根に しんしんと雪が 降り続けています。  通りに面した家の灯りが 黄色くぽつりぽつりと 見えているだけで、辺りは 雪の積もっていく屋根だけが 薄青く連なっていました。

 「太郎をねむらせ、太郎の屋根に雪ふりつむ

     二郎をねむらせ、二郎の屋根に雪ふりつむ」   (雪) 

三好達治の 小さくて 美しい詩が 思い出されます。

 

 

唐招提寺の 障壁画が 展示されていました。

青い青い大海原が 圧巻でした。襖16枚に どこまでも続く波。洗われる岩。

この大きな作品を 物するまで どんな困難と葛藤があったことでしょう。

 

葉擦れの音が いつまでも聞こえてくるような 揚州の柳が印象的な襖絵。墨絵でした。

黄山と桂林のどちらの襖絵も 溶け込むような墨絵でした。

 

 🌿🌿🌿

たくさんの絵を観ているうちに、とても昔に   買い求めた本が 家にあることを思い出しました。     家に帰って 取り出してみます。

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コンコルド広場の椅子」(Les chaises de la Place de la Concorde) 東山魁夷

コンコルド広場には、いろんな椅子が 置いてあるそうです。  行ったことがあると思うけれど、覚えていません…。

 

椅子が ひとり呟く。

いろんな人が座って、ひとしきり休むと 立ち上がって 去って行く。

椅子は 自分で動くことはできないが、人間は 自分たちが 自分で動いていると思い込んでいる。

夏の夜には 椅子たちは、  チュイルリー公園の木陰に 置かれてみたい。

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そして、自分に座って談笑する 若い人たちの楽しみを楽しみたい。

 

ある時は 椅子から立ち上がった夜明けに、青年が セーヌ川に身を沈めた。

椅子によじ登った小さな子どもの手からは、風船が 飛ぶ。

椅子の夢。椅子たちも、浮き上がって 夜のエッフェル塔の前を 遊泳して行く。

 

間もなく 冬が来る。枯れ葉の中に置かれた椅子。

 

そんな 話が添えてある 画集でした。(不味い要約しかできなくて がっかりです。ごめんなさいね。)

 

日本画ではない 絵本のような 画集。

観るほどに 広がっていく静謐な世界。

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コンコルド広場の椅子」の本が収めてある箱は、枯れた薄いブルーグレーでした。箱には 椅子の絵が 空押しされた贅沢な装丁でした。
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多分 本を買ったその頃に、神戸市立博物館で開かれていた展覧会の パンフレットと半券です。本に挟まっていました。

半券の絵は、東山魁夷の あお が遺憾なく表現された「緑の窓 」。この度の回顧展でも 展示されていました。

京都の近代美術館の 東山魁夷展は、たくさんの方が 観に来られていました。

少し離れて観たい作品が 多かったのですが、叶えられました。 懐かしくて 素敵な展覧会でした。

 

長くなりました。拙い感想で 申し訳ありません。

ご覧いただきまして、ありがとうございます。

 

 


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  「いつしか明けてゐる茶の花」(210×295m/m) 種田山頭火 句                                                             村上翔雲 書