野の書ギャラリー

書家村上翔雲の作品を少しずつご紹介させてください。日々の雑感もほんの少し

松山で 鰹のたたきをいただきます。

こんにちは。

お元気でいらっしゃいますか。

 

先日 愛媛県松山市へ行きました。 車で6時間ちょっとかかります。

3ヶ月ほど前に 藁焼きの鰹のたたきのお店の予約をしていました。

 

行きは 岡山から瀬戸中央自動車道(瀬戸大橋)を参りました。瀬戸内海を走る時、小雨がぱらぱらと。曇りでしたが、海を渡る橋は 気持ちが上がります。


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パーキングエリアへ寄る時間を惜しんで 走る車の中から撮ったので、あまりきれいな写真ではありませんが、小さな島々が望めます。
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島の間に 潮目が見えます。

お昼は 坂出市で降りて セルフのお店で 釜揚げうどんをいただきました。小さいサイズでも十分な量です。しっかりとしていて、 もちもちでした。

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四国の真ん中を東西に伸びる四国山地は、高い山が少ないところから来た私たちには 聳えるように見えます。西日本最高峰と言われる石鎚山は 1,982mあり日本百名山のひとつとのことです。

高松道から松山道を走っていると 遠くへ来たことを実感しました。f:id:snow36:20191108203358j:image

松山市へ向かう間に 少し気づいたのですが、皆さん 片道2車線の走行車線を走って 追い越す時だけ 追い越し車線を使われています。

本当は そうするものなのでしょう。速い車は ずっと追い越し車線を走っているようなところから来た私たちには とても新鮮に映りました。

私たちも同じようにして 走行車線を走ります。

 

 松山に着いて まず道後温泉へ行ってみました。土曜日の午後の温泉は 混んでいました。並んで待つことを諦めて、外からの写真だけを撮りました。堪え性のないことです。

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みかん色の路面電車(伊予鉄)が 走っています。路面電車、西宮などでも かなり昔に走っていたことを 微かに思い出して ひと区間だけ乗ってみます。

道後温泉道後公園。歩いても近いです。f:id:snow36:20191108232935j:image

私たちが住んでいるところのJRの電車は 単線ですが、こちらは道路の中央に 2本線路が通っていて 広々と見えます。下の写真は、連れ合いの車から見たところです。路線が分かれていて たくさん走っていました。

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バスもみかんの色をしていました🍊

 

路面電車を降りた道後公園では、黄色い帽子を被ったボランティアの方に 湯築(ゆづき)城と 城主河野氏の歴史の説明や 夏目漱石正岡子規のお話を聞かせていただきました。

湯築城は、中世のお城とのことで 地形を利用したお城には、天守閣がなかったとのことです。今は、公園になっていて、資料館や 復元された武家屋敷、ゆかりの正岡子規記念博物館などがあるそうです。

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猫の手(足)跡が付いたまま焼かれた 素朴なお皿が 資料館に飾られていました。かわいらしいです。

 

ボランティアの方から 河野氏湯築城のお話をとても興味深く聞かせていただいきました。

お礼を言って失礼した後、復元された武家屋敷の前に張り巡らされた榛色の土壁の前を通って お目当ての 正岡子規記念博物館へ行こうとすると、

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後ろから 鰹のたたきのお店の予約の時間だと申します。

                                 ❗ 

いや、あの、 せっかく来たので、夏目漱石正岡子規の並んだ句碑と 博物館を見たいのですけれど…。

 

 

🌿🌿
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伺った鰹のたたきのお店です。鰹漁が盛んなところで、藁で焼くお店が人気とのことです。 藁焼きのお店は 他にも何件もありました。

カウンター席に通されて、鰹のさくを焼くところを拝見します。


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藁をひと掴み入れると 白い炎が上がります。もう2度ほど 藁を入れて焙る時間は 2、3分ぐらいだったでしょうか。魚の焼ける匂いが 少しし出したら、火から下ろして調理台へ持って来られました。

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まな板の上で さくを手早く鉄の串から外して、切り分け 塩を振ります。見る間に 料理が出来上がりました。
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塩たたきは 口に運ぶと 外は香ばしく口の中がほんのり温かくなりました。食感もほどよく、お塩が 本当によく合います。ふんわりと新しい赤身のお味が広がります。

臭みがなかったので、添えられた薬味は要りませんでした。

私の知る鰹のたたきとは別のものでした。塩だけで 飽きない美味しさです。焼くところをまた見たかったこともありますが、その美味しさに お代わりをしてしまいました。

 

 ウツボの唐揚げは さくっとしていて中はしっとりとしていました。ハモもそうですが、強面の魚の白身は 本当に美味しいですね。

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深海魚のメヒカリを焼いたもの。珍しくて頼んでみました。

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いい匂いで つい先に一つつまんでしまいました。シシャモを思い出す食感と お味で 脂が乗っています。ほどほどにしっかりとした身には じんわり滋味を感じます。ご飯がおいしいでしょうね。地酒のお供にも。

 

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焼き米茄子も同じように 焼いてもらっていただきました。氷水に浸さないので水っぽくならずに茄子がおいしく、ほかほかとして瑞々しいです。

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松山の人は 話し方が穏やかで優しい印象を受けました。運転をしていても、皆さん とても親切でした。

翌日は、松山城へ行ってみました。何だか 食べたもののことばかりになっていますね。

続きは 次回に 書かせてくださいね。

 

いつも ご覧くださいましてありがとうございます。


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ヒヤシンス科の ポリキセナが咲き始めました。

 

 


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「鶏頭や雁の来る時 なほあかし  芭蕉 句」続猿蓑   松尾芭蕉 句  (村上翔雲遺作展より  軸装)

 


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「朝露しっとり 行きたい方へ行く  山頭火 句」(240×320m/m) 種田山頭火 句      村上翔雲 書

秋の静め

こんにちは。

お元気でいらっしゃいますか。

我が家も ようやく秋明菊が咲き始めました。


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ミズヒキが 近所の歯医者さんの畑のそばで咲いていました。去年も あまりの小ささに なかなかカメラの焦点が合いませんでした。誰もいないのをいいことに いつまでも屈みこんで撮ったことを思い出します。f:id:snow36:20191031195628j:image

 

近所の水路のそばでは たくさんの花が急に咲き始めました。白いミゾソバのようにも見えましたが、少し遠くてわかりませんでした。

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🌿🌿

滝を見たくなって 休日の晴れ間に山の中をドライブしました。10月の始め頃のことです。

見たかった滝は、道沿いにはなく かなり歩かなければ 行き着かないようでした。

滝へ行くのは諦めて、少し歩いてみました。

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ここへ 渓流釣りに来たことがあると、連れ合いが申します。イワナは もう釣れなくなって久しいと思いますが (イワナは まだ釣れるのではないかと申しております…)、アマゴなら まだ釣れそうな気もいたします。


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自然に咲く花が かわいらしいです。野に咲いていると、ゲンノショウコも楽しそうですね。

 

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更にしばらく車で行くと、先に 砂防ダム(それほど高さがないので 砂防堰堤・さぼうえんてい でしょうか) がありました。f:id:snow36:20191031201113j:image



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まっすぐ立つ黄色の花が あちらこちらに目立って咲いています。遠目に セイタカアワダチソウかもしれないと思いました。でも 林の影になった川沿いに育つものでしょうか。

近寄って見ると、丸い葉が 花の下の方に茂っています。後で調べてみると、オタカラコウのようでした。

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裏が枯れ葉のような蝶々が オタカラコウにとまっています。キタテハでしょうか。羽の先は丸いですが、名前は 迷うところです。少し野生味を感じます。(でも、私が写せるぐらいですから、よほど のんびりしています)

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渓流の音が絶え間なく続きます。時折 風がそよいで葉擦れが聞こえます。虫の羽音。
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麓は 晴れていましたが、山の上は 霧のように雨が降って 植物の匂いが立ってきました。

 

 

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先日 藤稔とポポーをくれた友人が、黒枝豆を2週続けて届けてくれました。


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すぐに枝から外して、鞘を大きな桶に入れて 井戸水でひたすら洗います。力仕事には 全く役に立たない者ですが、勝手なもので美味しいものの時は動きます。

今回いただいた量も シンクにいっぱいの黒枝豆です。

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塩で湯がいて、義弟宅などと分けさせていただきました。残りは冷凍にしました。

黒豆の枝豆は 大きくて もっちりしていて甘味があり、ふくよかです。感謝していただきます。

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🎃🎃🎃

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娘から 写真が送られて来ました。

保育所の 2歳の子どもたちのハロウィン、小さな紙ポーチに 子どもたちが色画用紙でカボチャを貼ったものだそうです。楽しそうな様子が目に浮かびます。

お菓子をいっぱいもらってね🍪🍬

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今日もご覧くださいまして ありがとうございました。

 



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「秋深き隣は何をする人ぞ   芭蕉 句」松尾芭蕉 句   (村上翔雲遺作展より  軸装)       

 


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「真理は 孤独の中で熟すべきものである  そして成熟すると論争を待たずに受け入れられるほど はっきりしたものになる   トルストイの言葉」   村上翔雲 書

 

天蓋の下で音楽を聴く

こんにちは。

前回は、たくさんの方にご覧いただきまして、本当にありがとうございました。心から感謝いたします。

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日曜日に、ポーランドのジャズを楽しむという催し「ポラ・Jazzの午後」へ行って来ました。

この度は、以前 ジャズのお店ソネに行ったというお話を書かせていただいた時に、ブログでお世話になっているunibabaさんから 「こんな企画が神戸であります。有名なポーランドのピアニストの演奏です。」と教えていただいた催しに伺ったお話です。どうぞ よろしくお付き合いください。

 

unibabaさんは、ポーランドのお話をはじめ、お庭や音楽、お料理など、本当に美しいブログを書かれていらっしゃいます。ブログから いろんなことを学ばせていただいております。 失礼ですが、気さくで素敵な方です😊  

 

🌿🌿

ポラ・Jazzの午後 in神戸

ポーランド政府観光局、日本ポーランド協会関西センター 共催

日本・ポーランド国交樹立100周年記念の特別企画とのことです。

会場のラピスホールは、神戸駅を北に歩いて文化ホールの近くと聞いていましたが、文化ホールの向こうは お寺がふたつ。お寺の中に?

本当に お寺の敷地にありました。ジャズをお寺で🎵 楽しそうです。


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他の日にもコンサートの予定があるようでした。

美しい民族衣装を着たポーランドの方が 出迎えてくださいました。(つい ぽーっとしていました。写真を撮らせてくださいとお願いすればよかったですね。)

 

室内の撮影を許可していただきました。
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音響の設備が調えられたホールの 舞台の中央には ピアノが置いてありました。後ろにワルシャワの王宮広場でしょうか。写真の映ったスクリーンがあり、その向こうにも 大きな仏像がおられました。

天井には天蓋が。

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80人の席が みるみる満席になっていきます。

 

ピアノ演奏は、ミハウ・ソブコヴィアクさん。何も知らないで出かけて行って 本当にお恥ずかしいのですが、たいへん有名な方なのですね。後で調べてみると 既に日本の大学で教えていらっしゃるそうです。

ショパンの曲をまず弾かれて、続いて ご自身でジャズにアレンジされた曲を弾かれるというスタイルで数曲弾いてくださいました。

力強い「革命のエチュード」のアレンジは、湧き上がり続ける透明な泡の波のように感じました。

 

ポーランドのジャズは、品がありながら 親しみ易く優しい印象を受けました。ミハウ・ソブコヴィアクさんの演奏は、華やかでとても美しかったです。

 

こちらの短い動画はこの度とは関係がないのですが、雰囲気がお伝えできればと思います。このような感じでした。

ミハウさんのお声が聞き取り難くなってしまっています。機知に富んだ楽しいお話をなさる方なのに すみません。とても魅力的な方で 会場は笑い声が絶えませんでした。

後で 会場からの質問に答えておられましたが、ショパンとジャズについて、ショパンは 日本で言えば 演歌のようなもの。ショパンの時代にジャズというジャンルがあったら、ショパンはジャズを書いていたと思うとおっしゃっておられました。

また、ポーランドのジャズについては 政治的な事情で、ポップスなどが許されなかったが ジャズは許されていたとのことでした。

ポーランドの作曲家ショパンの曲は ポーランドでは よくジャズにアレンジされるそうです。

 

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下の写真は、ポーランドの手作りのお菓子です。休憩時間に出してくださいました。

ファヴォルキ(粉砂糖を振って白く見える揚げ菓子)と、ピェルニク(シナモン、クローブ、カルダモン、ジンジャーなどのハーブやスパイスを合わせてパウンドケーキの型なら20g以上入れるケーキなのだそうです) お店や家庭によってスパイスの配分が違うそうです。

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飲み物は 麦から作られたインカコーヒーをいただいてみました。unibabaさんのブログで以前拝見して とてもきれいな色で素敵だった記憶があるフルーツティーも選べましたが、コーヒーではないインカコーヒーに惹かれてしまいました。お味は 麦茶とは違って、酸味を僅かに感じるような。香りと香ばしさは麦だからでしょうか。確かにミルクと合いそうです。

ピェルニクは、帰ってから 留守番をしていた連れ合いといただきました。f:id:snow36:20191024192542j:image

いろんな香りが合わさって、いい匂いがしました。レモンのように爽やかな香りはカルダモンでしょうか。お味は、スパイスがまとまっていて 優しい甘さでした。香りが苦手なはずの連れ合いが これはおいしい❗と喜んで食べていました。

 

ポーランドの美しい街並みや、景勝地のお話、最近のポーランドのジャズレーベルのことなど 興味深い話題が続きます。


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 最後に、ミハウさんが まさに作りながら弾いていく即興曲と、 最近のジャズやレーベルのお話をしてくださった品川明子さんとご一緒に ピアノと歌を聴かせてくださいました。

曲は、ポーランドの映画「Cold War」から「ふたつの心」のジャズアレンジ。

品川さんは ジャズシンガーでいらっしゃるのに 自己紹介をされていなかったので、歌い始められると、力強い美しい声に驚いてしまいました。掻き口説くような泣き声を表現する「オヨヨィ…」という言葉が あまりにも切なくて、聴きほれました。

 

***

兵庫県立美術館では、国交樹立100周年記念の ショパン展も開かれており、ワルシャワ蜂起より以前にあったソ連との戦いの後の出来事についての「ポーランドのシベリア孤児と神戸・大阪」というシンポジウムもあるそうです。とても興味深く思います。

 

盛りだくさんの内容で、とても楽しく過ごさせていただきました。

unibabaさん、ありがとうございました。

 

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帰ってから 本棚を探っていましたら、息子が置いて行った「ジャイロスコープ」や「フィッシュストーリー」などの奥から エッセイストの工藤久代さんの「ワルシャワ貧乏物語」が出てきました。かなり以前の古い文庫本です。

貧乏と言いながら 1970年前後のポーランドの生活が生き生きと心豊かに描かれていて、素朴な生活が 珍しくて懐かしく感じます。「 ポーランドのケシ粒は 白くなくて 黒に近い青灰色だ」とか、ヴォツワーヴェクのファイアンスという陶器のお話だとか、どちらも言葉がわからないのに お隣の奥さん(パニと呼んでおられました) との身の上話が通じたことなど、つい面白くなって読み返しました。

工藤久代さんのご主人の工藤幸雄さんは、ご著書のイメージから ジャーナリストのように思い込んでいましたが、詩人で文学者でいらしゃったのですね。(大して読んでいなかったのが……。 お恥ずかしいです)

 

また 長くなってしまいました。

今日も お付き合いくださいまして、本当にありがとうございます。


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厳つすぎる表情の猫。冒頭のテッセンの花の近くで いつも睨みを利かせています。

 


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「よびかけられて ふりかへったが 落葉林  山頭火 句」(240×320m/m) 種田山頭火

 


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「すべて労する者 重荷を負う者 われにきたれ われ汝を休ません  マタイ伝」(150×200m/m)       聖句       村上翔雲 書

 

 

 

北陸でイタリア歌曲を聴きたいと思ったこと。

こんにちは。

台風19号で被災された方々に お見舞いを申し上げます。

1日も早く日常を取り戻されますようお祈り申し上げます。


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ホトトギス 松風が ようやく咲き始めました。

 

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先週末に、北陸にお住まいのブロガーさんの舞台を拝見させていただきたいと思い 伺う予定にしておりました。

 

今日は りんりんさん のお話をさせてくださいね。

 

りんりんさんは、お仕事、庭の植物、ご家族のことなど、日常のことを書いていらっしゃいます。

半年以上前のことだったでしょうか。ある日の動画に それまで私の持っていた りんりんさんの印象が がらりと変わりました。

舞台衣装を纏った ほっそりとした女性が、歌を歌っています。

 

・・・聴き入ってしまいました。

銀の鈴を転がすような 繊細な歌声。

コロラチューラと言うのですね。

 

今さらながら お恥ずかしいのですが、私は 何かを専門的に学んだことは ほとんどありません。だから 何について書いても中途半端で、すべて感想文になってしまうことに いつもお恥ずかしく思っていますが、

そんな物を知らない私でも すぐに引き込まれてしまう歌声でした。舞台を拝見できればと 思いました。

夏の初めに、りんりんさんのブログに 10月の舞台のための練習を始めると書いていらっしゃいました。

聴いてみたいです❗     

じゃあ、舞台を観に来ますか❔

行きま〜す🎵

 

🌿🌿🌿

自分だけの用事のために 泊まり掛けで出かけることは、本当に久しぶりです。

前日に 大阪に近い娘の部屋に泊まらせてもらうことにしました。サンダーバード北陸新幹線を予約して、ホテルを押さえて……。浮かれていますね。

 

 

台風19号が、ひどい災害となっていきました。

娘とふたりで テレビの映像を見ていました。各地で起こるあまりのことに、保育士の娘が 「何かの時のために 定期的に避難訓練をしているけど、」と 言い出しました。「何かあったら、子どもたちを 何も考えないないで助けると思うけど、ひとりで2歳児10人を守りきれるのかな。あの子たち ものすごくかわいいねん…。」  と申しました。私は 娘の2歳の頃を思い出していました。ふたりとも 次第に言葉がなくなり黙り込むだけでした。

日曜日の朝になって、あまりに広い地域に被害が起こっていることが わかりはじめて、恐ろしくなりました。

動いていないサンダーバード北陸新幹線 (千曲川が決壊して、北陸新幹線の1/3が浸かったと聞きました) の払い戻しと ホテルをキャンセルしました。伺えなかったことを残念に思う気持ちが強くありました。

 

まだ水に浸かったままのところが 今もあるというのに、私の感覚は ずれている、この文章を書きながら感じます。

 

りんりんさんのところは どうだろう。前日の夜のりんりんさんのメールのご様子では、舞台は できそうでした。

きっと 大丈夫。舞台の準備でお忙しいから、とりあえず、行けなくなったことをメールで伝えてお詫びしました。

 

夕方 舞台が終わった頃に、お電話をいただきました。電話でやり取りをしたことはありませんでしたが、すぐに りんりんさんからだと わかりました。

りんりんさんは、以前動画で お聴きした歌声の印象の通りの方でした。

りんりんさんは、普段は 施設に入所されているお年寄りを ヘルパーさんたちと一緒になってお世話をされている看護師さんです。控えめに書かれていますが、体の弱られたお年寄りばかりのおられるところです。ご苦労が偲ばれます。

あまり書くとご迷惑かもしれませんが、はらはらするようなお話を書かれていることも     あります。利用者さんとのお別れを 心から悲しんでおられる様子に 私も心が痛みます。

我が家は、身内が 要介護認定を受けているので、特養(実際はグループホームの方ですが) や老健、ディサービスで たいへんお世話になっています。

失礼な申しようかもしれませんが、りんりんさんのブログを拝見して、お世話をしてくださる方が より身近に感じるようになりました。

いつか 私のコメントに、常に死と向かい合っている厳しい仕事だから、全く違うことに 一生懸命になることで気持ちを切り替えたいから 声楽を学んでいると お返事をいただいたことがありました。このお仕事に 改めて有り難く思い 申し訳なくも思いました。

でも、イタリア語で歌われるのですね。歌曲の発声の仕方などの技術を学ぶことのご苦労は、時々ブログに ちょっとだけ(本当に ちょっとだけ) 書いておられますが、これはこれで大変なことと思いました。

youtu.beに歌は ありませんが、ピアノを演奏されていらっしゃる動画は おありです。

貼り付け、今度は動画ですね。 どうでしょうか。やっぱり 失敗かな…。頼りなくて ごめんなさいね。

[http://www..com/:title]

 

ブログは、どう育っていくのか わからないものですね。ブログを書くことで、何かを深く考える習慣が あまりなかった私も 少しずつ学ばせていただくようになってきました。

これも 拝見させていただいているブロガーの皆さまのお陰だと思っております。心から感謝します。

 

北陸に行って りんりんさんの イタリア歌曲をお聴きすることはできませんでしたが、

電話で直接お話ができたことが 本当に嬉しかったです。りんりんさん ありがとうございました。

いろんなことを娘と話す時間も たっぷりできて、こちらもよかったと思います。

 

 

今日も お付き合いくださいまして、ありがとうございました。

週末の雨が どうぞひどくなりませんように。f:id:snow36:20191017160154j:image

 


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「我なんぢと偕(とも)にあり  使徒行伝」(150×200m/m)  聖句

 


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「枯草に残る日の色は かなし   山頭火 句」

(530×690m/m) 種田山頭火 句        村上翔雲 書

 

 

 

 

 

余部鉄橋へ。

こんにちは。

9月のお話で 遅くなってしまいましたが、どうぞ よろしくおつき合いください。

 

余部(あまるべ)鉄橋は、道の駅を目標に参ります。

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兵庫県香美町香住区余部と長谷川を眼下に見る余部鉄橋は、湯村温泉を舞台としたドラマ「夢千代日記」の撮影にも使われていたそうです。

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高さ41mの余部鉄橋は、餘部(あまるべ)駅から鎧駅間を繋ぐ311mの長さがあります。アメリカから海路3ヶ月かけて取り寄せられた鋼材で造られました。開通は 1912年(明治45) 3月とのことでした。(写真は、今の余部橋梁です。後で触れますが、架け替えられています。)

冬の日本海と言えば、灰青の雲が重く低く垂れ込めた空を映す 荒れた暗く深い海を思い浮かべます。

33年前の 1986年(昭和61) 12月に 強風の吹く中の突風で 鉄橋から回送電車が転落して、真下のカニ加工工場も巻き込む大事故が起こりました。 

 

 

山に現れるコンクリートの橋梁は、巨大なモニュメントにも見えます。

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「空の駅・餘部(あまるべ)駅」へエレベーターで上がってみました。

むき出しの41mの高さは、少し すくみます。


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事故のあった鉄橋は、橋脚と橋桁を一部残して取り壊されていました。古い線路の右には、2010年(平成22年)に コンクリートの橋梁が 新しく架けられ 「空の駅」としてエレベーターも整えられています。


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ここは JR山陰本線餘部駅」です。

左の柵の向こうは、取り壊された鉄橋の線路が 途中まで残してあり、柵の中なら歩くこともできます。

途切れた線路は 空へ駆け昇って行く列車の印象にも重なると言われているそうです。美しい眺め。それでも、海風に晒されて錆びたレールは、事故と鉄橋の記憶なのですね。 ひっそりとした様子からは、取り残されたような うら寂しさも また感じます。

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鉄橋が建てられた当時は、長いトンネルを掘る技術より、橋を架ける技術の方が勝っていたのだそうです。

 

駅のそばから 山をしばらく登ったところに撮影スポットがあると聞いて行ってみます。

ひとり先客がおられましたが、横から失礼して撮らせていただきました。f:id:snow36:20191007134843j:image

線路の先は トンネル。


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鉄橋より高いところからの眺めは、ジオラマを見るようで 海辺の寄り集まる屋根の下に温かな灯りがともることを思うと 郷愁を感じました。明治時代、この沖に アメリカから鉄橋の鋼材が届いたのですね。


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ご近所から、藤稔(ふじみのり) をいただきました。
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ずっしりと重みがあります。瑞々しい果実を美味しくいただきましたが、まだ量産できないようで、出荷しないそうです。

ポポーという 名前しか知らなかった果物もいただきました。アケビのような、メークインのような形をしています。

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珍しくて しばらく食卓に置いていたら、甘口の日本酒のような香りが 台所いっぱいに漂ってきました。

あわてて 冷蔵庫の野菜室に入れました。冷蔵庫の他の扉を開け閉めする度にも、香りが立ちます。

冷やして 薄い皮を剥くと、ぽってりとした 赤みを感じる黄色い果実が現れます。f:id:snow36:20191009104914j:image

元々は 北アメリカから来たということですが、南国の果物を思わせる味がします。香りほど強く主張しない甘さで楽しめました。

栄養価は とても高いそうですが、足が早いそうです。冷凍もできるのですね。

 

 

 

 

こちらは、冬に 一度 ご覧いただいた作品ですが、どうぞ もう一度 ご覧くださいますように。


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  「秋の瞳・うつくしいもの

わたしみづからのなかでもいい

わたしの外の  せかいでも  いい

どこにか  「ほんとうに美しいもの」は  ないのか

それが  敵であっても  かまわない

及びがたくても  よい

ただ  在るといふことが  分りさへすれば

ああ  ひさしくも  これを追ふにつかれたこころ」

   八木重吉 詩       村上翔雲 書   額装

 

 

 

台風が 近づいていますね。どうぞ被災されたところに これ以上の被害がありませんように。

いつも ご覧くださいまして、ありがとうございます。

書の展覧会へ伺う Ⅱ

こんにちは。

お元気でいらっしゃいましたか。

今夜は 強い雨が降ったり止んだりで、垂れ込めた雲が 時折音を立てずに光っています。

 

まず、水曜日に うっかりと下書きなどを公開してしまい あわてて取り消したものが お見苦しく出てしまいましたことを お詫びします。

一緒にいた妹に 呆れられたり、「私が 話しかけたから、間違えて『公開』を押しちゃったのかしら」と心配されたり。

そんなことは ないのです。スマートフォンで書いているうちに、うっかり触ってしまっただけなのです。ご心配のコメントをくださった方もいらっしゃいました。ありがとうございました。

 

🌿

今日は、毎年 神戸で開かれる 書道の「名筆研究会展」に伺ったお話です。どうぞよろしくお付き合いください。

こちらの書道展は、父が立ち上げた書道の会「名筆研究会」を 引き継がれて続けていらっしゃる先生方の作品展です。毎回 一つのテーマに沿った作品を出されています。この度のテーマは、「芽」。

 

 

雨混じりの日でしたので、カメラは持参せずに スマートフォンで撮らせていただきました。先生方の作品を いくつか揚げさせてください。(敬称は すべて「さん」で失礼いたします)


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「木の下     燃えて燃えて 焼けて焼けて 焦げて 焦げて 枯れて

ふしぎに芽ぶいて 葉を茂らせて 葉を落として また芽ぶいて また茂って また葉を落として また。

芽ぶきはじめた木の下を人が歩いていく。

春の日ざしのなかを 生き残った人が歩いていく。」(150×210cm)

詩人 安水稔和さんの 阪神淡路大震災についての著書「焼野の草びら」より「木の下」       廣田瑛子さん 書

 


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「くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の 針やはらかに春雨のふる  正岡子規の歌」(120×240cm) 正岡子規 歌     志水真智子さん 書


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「がうがうと 欅(けやき)芽ぶりけり 風の中  波郷 句」(70×288cm) 石田波郷 句   西本直代さん 書       こちらは、筆遣いを面白く思いました。プレートのご説明には、「煤とのりを混ぜあわせた手製の墨に、手作りの藁の筆で、その筆触に豪快に風になびく様子を狙いました。」 と書かれてありました。

 


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「泣きながら からだに刻んで行く  勉強があたらしい芽を  ぐんぐん噴いて  どこまで延びるかわからない  それが あたらしい時代の百姓   全体の学問なんだ    宮澤賢治の詩抄」(136×140cm)〈あすこの田はねえ〉宮澤賢治 詩      大森峰子さん 書

 

 

 


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「種    重い闇を抜け  青い疑問符の芽   黒いぼうしは私    風の声を聞こうと耳だてる葉っぱ   白い根の淋しさよ   自作詩」(150×180cm)   六車明峰さん 書

 


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こちらは、鈴木漠さんの詩〈夕虹〉(90×300cm)

井元祥山 会長の作品です。ひたすら詩を読み込まれて 臨まれたそうです。腰を痛められているのにも関わらず、かなりの大作でした。

 

現代書は、まず古典を修めた後に 取りかかるものと聞いております。たゆまず研鑽を積まれ続けられておられる先生方に 頭が下がります。

私が 意見などができるものではありませんが、紙から 作家と書家の力が湧き出す作品を拝見させていただきました。 今年は特に素晴らしい作品群と存じました。

 

こうして、あちらこちらで 作品を撮らせていただいているうちに ふと 母のことを思い出していました。

会の展覧会や、個展を 父が開く時、母がカメラを携えて 作品を撮っていました。初期の頃には 狭いキッチンを暗室にして、撮ってきた写真を現像していました。母のカメラワークには 私は到底及びません。(オートフォーカス頼みですし…)

照明の修理中で、お写真を撮れなかった先生の作品もありました。すべてを掲載できない失礼をお許しください。

 

父の作品のコーナーも 作ってくださっていました。ひとつだけ 揚げさせてください。

名筆研究会の先生方 いつもありがとうございます。

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「最も偉大な真理は きわめて単純なものである   トルストイの言葉」(38

×28cm)   村上翔雲 書

 

こちらの 「第54回  '19名筆研究会展」は 10月6日(日)まで 兵庫県民会館 アートギャラリーで開催されています。

 

少し季節のものを。

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秋に向かう山深いところを ドライブしていると、
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茶蕎麦のお店を見つけました。囲炉裏の向こう 上がり框から 庭が広がるのが見えます。
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来る途中に 茶畑がありました。普通のお蕎麦が好きですが、茶蕎麦もいいですね。ふわふわのきな粉にくるまったわらび餅も 温かくておいしくいただきました。
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萱の厚みが、雨や雪を凌ぐのですね。先日 拝読した 篠田桃紅さんの随筆に描かれていた 富士山のふもとのお宅の話を思い出していました。

 

 

最後まで ご覧くださいまして、ありがとうございます。

 

 

墨の薫り

こんにちは。 

(こちらは、記事のリンク先を訂正させていただいたものです。shoyoさんのところへ行けなくなっていました。訂正してお詫びします。申し訳ありませんでした。)

shoyoさん  『106歳を生きる 篠田桃紅ーとどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち』展のチラシ/YouTubeから - エブリディ・マジック-日だまりに猫と戯れ   

涼しくなりましたね。お元気でいらっしゃいましたか。

最近は 毎朝 桜の葉を掻き集めるように 掃除しています。しばらくすると 枝だけになりますね。


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金木犀の香りが 湿りを持つ空気に漂い出しました。

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🌿

先週、神戸市東灘区御影にある 香雪美術館へ参りました。画家 篠田桃紅さんの作品展を拝見しました。どうぞ よろしくお付き合いください。

「篠田桃紅  (106歳を生きる)  とどめ得ぬもの  墨のいろ  心のかたち」

 

少し前に、shoyoさん (『106歳を生きる 篠田桃紅ーとどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち』展のチラシ/YouTubeから - エブリディ・マジック-日だまりに猫と戯れ)がブログに 篠田桃紅(しのだ とうこう)さんについてのお話と 篠田桃紅さんを特集した番組の動画を載せておられました。

shoyoさんは、本や 音楽、植物や お料理など 幅広く書かれていらっしゃいます。どのお話もたいへん印象深く、いつも楽しみに拝見させていただいています。

shoyoさんの 篠田桃紅さんの展覧会についてのブログを拝見して、そして 気づけば 1時間近くの 息を飲むようなドキュメンタリーの動画に釘付けになり、「行かないと、後々後悔する」と思い 9月になり出掛けてみました。

 

阪急御影駅から 東へ南へと 細い住宅街の道を辿ります。瀟洒な建物が並ぶ落ち着きのある通りでした。

神戸は 表情豊かな街なのだと 改めて思います。
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右の弓弦羽神社と道を隔てて 左の石垣、香雪美術館は 庭の樹木が濃い蔭を作る美しいところです。



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篠田桃紅さんは、書家であり、水墨抽象画家で 随筆家です。

初期は 中原中也の詩「山のひととき」を二曲一双屏風に描かれた「山上のひととき」(1952年)。萩原朔太郎の「大佛」を和紙に墨で書かれたもの。風に揺らぐ柳の葉を思うような動きを感じる文字でした。

 

ニューヨーク時代を経て、銀地やプラチナ地に 銀泥の飛沫がつくる偶然の妙の合わさった作品。

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「月読み moon」(149.0×104.0cm) ( 1978年)

 

「越くら山」百人一首カルタ (2011年 ) は、華やかな唐紙の台紙に 書かれた字も涼やかです。

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「人はいさ 心もしらずふるさとは 花ぞむかしの香ににほいける 紀貫之

 

 

作品が 大きなものが多いので、大きな硯に 墨を磨る作業ひとつ取ってもたいへんでしょうし、 描き上げる集中力も 並み大抵なものではないと名筆研究会の先生がおっしゃっておられましたが、素人の私も驚きました。

間近で じっくりと拝見してみますと、地に塗られた色が 角度によって変わります。プラチナ地 ですが、抑えた照明を受けて 碧く鈍い光を放っていました。   

抽象画は、私などでは 主題がわからなくなることも ままありますが、篠田桃紅さんの作品からしんしんと伝わってくる印象は、端然とした空気の中に 豊かで温かいものが溢れているようでした。森の中に溶け込んでいくようでした。

 

篠田桃紅さんの仕事部屋を shoyoさんのブログの動画で拝見しました。いろんな種類の和紙が くるくると巻かれ 無造作に積み上げられた棚。作品を描く大きなつくえ。大きな硯。特注の長い筆が並んで吊るされている壁。墨と紙の薫り。「墨が私を戒める。『あなたは まだこの程度だよ。』」(NHKドキュメンタリーより)

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かましくも 自分の父のささやかな思い出と重なり、胸に迫ってくるほど懐かしい光景でした。


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「暁 Daybreak」(208.5×148.0cm)  (2007年)かなり大きな作品です。

墨の濃淡による表現には限りはないのです。

 

自由とは、自ら由(よ)るということ。自由であるということは、独立する人間であるということ。という内容の篠田さんの文をコピーした紙が ガラスに張られていました。

 

🌿🌿

受付の向かいの棚に、展覧会の絵葉書や小さな品物が並べてありました。ふと見ると、装丁やサイズの異なる本が目に入りました。篠田桃紅さんの著書を読んでみたいと思いました。

 

篠田桃紅さんの「その日の墨」(河出文庫・1983年刊)。清冽な急流を眺めるような思いで 拝読しました。一見すると 若々しく、強く揺るぎのない文章からは、迸る言葉の連なりそのままの方なのだと思いました。

しかし、読み進めると この印象は、次第に 端然とした佇まいの それでいて しっとりと艶やかなものに変わっていきました。お人なりも違うでしょうし、文体も異なるのですが、野上弥生子さんの随筆を思い起こしていました。 

書や、季節、百人一首万葉集、花ざかりの桷の花と山中湖などの自然への思い、焼き物、綾な着物考、篠田桃紅さんの目に触れるものすべてへの美しい一言が 心に残っていきます。

女学校時代には、制服はないものの スカートの襞の数や色を咎められることがあり、「これは私に似合うと思うので」と返したこと、

当然結婚をと思われるお父さまに 何とか独りでやってゆきたいと家を出たこと、特に若い女性には、慣習の壁が張り巡らされるような時代だったことでしょう。

1956年当時 民間人が海外へ行くことは とても難しかったのに ニューヨークで個展を開こうと渡米された折りに、作品を包んだ和紙の美しさや保護のために当ててあった杉板の香りに MITの教授が 驚かれたこと、

ニューヨークで名の通った画廊に認めてもらって個展を開くために、残り3週間のビザを 2年滞在にしてもらうために奔走された逸話など、興味深いお話が続きました。

「私のかたち」を創りたくて描き続けられておられる しゃんと背筋の伸びたお姿が、とても眩しく感じられました。外圧は とてつもなかったことと思います。

例えば 「内的制約は際限がないから、外的制約よりはるかに苦しみを課すものだ」と。迷いなく自分の思う方、感性に従って 間違うことなく選び取っていく正確さ。潔さ。

他におもねることなく、自分を信じて疾走していく様は、作品に昇華されているのですね。

「芸術は 感覚的に本質に向き合いたくなる人生の真理の一端を 静かに垣間見せてくれる気がします」shoyoさんのこちらの ご感想に共感いたしました。

shoyoさん ありがとうございます。

今日も ほとんど、私の拙い感想文になってしまいました。篠田桃紅さんの「その日の墨」から 一節をご紹介させてください。

「内包の溢れるものが持つ、ゆたかで明るいひきしまったいろ、山の冷気が凝ったかと思う果実のつめたさ、と、その色のあたたかさ。 」その日の墨・朱華  「柿の実」より。

 

 

六甲山が 見えます。マルーンの電車に乗って三宮へ、そして乗り換えて帰っていきました。


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木槿は、夏が過ぎてから盛んに咲き始めて 元気そうにしています。

 

***

日曜日の 神戸新聞俳人 伊丹三樹彦先生の訃報を知りました。「写俳」という俳句と写真を融合した表現が 心に残っています。

父も 伊丹三樹彦先生を尊敬し、先生の俳句を書で表現して、個展も開かせていただいておりました。

遥か昔、父の名筆25周年記念の折りには、私まで写真に撮ってくださったことを覚えております。

伊丹三樹彦先生のご冥福をお祈りいたします。

 

今日もご覧くださいまして、ありがとうございました。

 


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「蝶とすれ違う 海峡のまっただなか  三樹彦の句」(195×350m/m)  伊丹三樹彦 句       村上翔雲 書